感動モノ!の8速AT トヨタGRヤリス ラリー2の戦闘力を高める「エボ」へ試乗 フィンランドが第2の故郷

公開 : 2024.03.19 19:05

ラリー2カテゴリーの戦闘力を高めるGRヤリスの進化 開発現場にもなったラリーの本場、フィンランドを英国編集部が訪問 氷上で「エボ」の違いを体感

GRヤリスの第2の故郷、フィンランド

フィンランドといえば、ムーミン? そうともいえるが、ラリーの本場だ。

ヘルシンキから約250km北上したユヴァスキュラの郊外、キエヴァリ・ランタピルッティは、「カッレ・ロバンペラの家」とも呼ばれる。ラリードライバーの彼は、この土地のグラベルやアイスバーンで才能を磨き上げてきたからだ。

トヨタGRヤリス(欧州仕様)
トヨタGRヤリス(欧州仕様)

今日は筆者が、凍った湖に立っている。トヨタGRヤリスの進化を試すため。滑りやすい路面は、ホットハッチを振り回すのに最適。アップデート前でも、GRヤリスのシャシーは秀抜だ。

助手席のセドリック・ライナーズ氏が、声を上げる。「ターン!」「ブレーキ!」「パワー!モア・パワー!」。熱狂的に叫ぶフィンランド生まれの彼は、英国育ちの筆者に、北欧風のドライビングスキルを叩き込む。

コーナーが迫ったらブレーキ。ステアリングホイールを一気に回し、アクセルペダルを蹴飛ばす。その角度で、ドリフトアングルを調整する。

セドリックは、ラリー用部品のサプライヤーとドライビング・スクールを経営する、エスコ・ライナーズ氏の息子。10歳の時に初めて運転したクルマは、グループN仕様のスバルインプレッサだったとか。

ラリーに対する情熱や運転スキルを、幼い頃から学んだといっていい。ヘンリ・トイヴォネン氏やトミ・マキネン氏など、多くのトップドライバーがこの土地から誕生する背景も表している。

そしてユヴァスキュラには、2017年以来、トヨタの世界ラリー選手権(WRC)チームの本拠地がある。GRヤリスの、第2の故郷といえる。

ラリーで得たものを、ロードカーへ実装する

マキネンと初めて対面したトヨタの前社長、豊田章男氏は、ラリーの話題で意気投合。トップカテゴリーで勝てるマシンを開発しようと考えた時、真っ先に電話をかけた相手も彼だった。

マキネンは、ドライバーとして一線を退いていたが、ラリーチームを運営していた。そこで彼は、グループN仕様のインプレッサ用ランニングギアを、トヨタGT86のシャシーへドッキング。同社の経営陣の期待へ応えた。

ユヴァスキュラで仕上げられるトヨタGRヤリスのラリーマシン
ユヴァスキュラで仕上げられるトヨタGRヤリスのラリーマシン

2014年のラリー・フィンランドでは、マキネンがドライブ。豊田章男氏が同乗し、デビューを飾った。2017年に復帰を果たしたトヨタのWRCチームも、彼がマネージメントしていたが、2020年に本腰を入れたトヨタが買収している。

初期のヤリス WRCは通常の5ドア・ハッチバックがベースで、高性能ながら、妥協も少なくなかった。そこで誕生したのが、GRヤリス。3ドアのボディシェルは、2021年仕様マシンのために生まれたといっていい。

従来的なホモロゲーション・マシンと異なり、GRヤリスは優れたロードカーとして開発されていたが、プロトタイプはフィンランドのユヴァスキュラへ輸送。一線のWRCドライバーによって、セットアップが詰められた。

「ラリーで得たものを、ロードカーへ実装することが重要。マーケティングではなく、WRCで学び取ったものを、GRヤリスへ落とし込みたいと考えています」。2020年に、トップドライバーからチーム監督へ就任した、ヤリ=マティ・ラトバラ氏が話す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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