上質さを極めた「第3」のビッグサルーン プジョー604 TI デイムラー・ソブリン S2 4.2(1)

公開 : 2024.03.30 17:45

上質さでベンチマークにあったジャガーXJ6

それを補ったのが、高水準な洗練性。乗り心地はしなやかで、車内は静かで、ジャガーXJの水準に届いていたといってもいい。対して、ドイツ勢のサルーンは乗り心地が硬く、ロードノイズも小さくなかった。

また604は、クラス最高の車内空間を実現していた。特にリアシートは前後方向にも上下方向にも余裕があり、荷室の大きさも驚くほど。

デイムラー・ソブリン S2 4.2(1973〜1979年/英国仕様)
デイムラー・ソブリン S2 4.2(1973〜1979年/英国仕様)

世界市場は604を好意的に受け止め、発売された1975年には約3万6000台がラインオフ。定期的なアップデートが加えられた。ところが、1980年代が迫ると売れ行きは鈍化。1979年に発売されたプジョー505が、人気の陰りへ拍車をかけた。

1978年に追加された604 TIは、燃料インジェクションを採用し、最高出力144psを獲得。1981年には、5速MTに加えて、3速ATも設定された。ターボディーゼルでターゲットの拡大も図られたが、特に北米での反応は振るわなかった。

キャブレター仕様の604 SLは、1982年に販売終了。1984年に2.8Lで157psの604 GTIを投入するが、1985年にモデルの幕引きを迎えた。

他方、上質さでベンチマークにあったジャガーXJ6 シリーズ2(S2)は、1973年に発売。順調に注文を集めたが、生産ラインの士気は低く、納車が早まることはなかった。

1975年の604へ対峙したのが、比較的価格が低く、経済的なXJ6 S2 3.4。もう少し予算を増やせば、充実装備で活発なXJ6 4.2を狙うこともできた。

見る角度によってぎこちなさがあるプジョー

今回ご登場願ったマルーンの4ドアサルーンは、XJ6の兄弟モデル、デイムラー・ソブリン S2 4.2。走行距離は2万9000kmを超えたばかりという極上コンディションで、落ち着いた佇まいには見慣れた感もある。

対して、604は英国でも珍しい。スタイリングは直線基調で引き締まり、固有の威厳を漂わせる。

プジョー604 TI(1975〜1985年/英国仕様)
プジョー604 TI(1975〜1985年/英国仕様)

ブルー・シルバーの604 TIは1981年式。グレートブリテン島南部、ソールズベリーに拠点を置くHCクラシックス社によってレストアを受けたばかりで、こちらも状態は最高といっていい。サビ1つないし、サスペンションもステアリングも新車のように機能する。

604 TIのリアドアを開くと、車内の広さが印象的。フランスでは、定番の公用車になったことにもうなずける。電気系統も、しっかりリビルドされている。部品の入手は難しいものの、ドナーとなる車両が別にあったそうだ。

スタイリングは、見る角度によってぎこちなさがある。リアのオーバーハングは長すぎるし、コンパクトなV6エンジンの結果といえる、短いフロント側とのバランスも良くない。どこから見ても美しい、ソブリン S2とは対象的だ。

604 TIの方が全幅は僅かに狭く、背が高く見える。だが実際は、12mmしか違わない。

この続きは、プジョー604 TI デイムラー・ソブリン S2 4(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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