栄光の「バス」が電動で復活! フォルクスワーゲンID.バズ 長期テスト(1) 古いファンも惹き付ける?

公開 : 2024.03.24 09:45

過去の栄光を今に蘇らせたVW ID.バズ チャーミングな見た目の電動ワンボックスの実力は? かつてのファンの心も掴める魅力はあるか 英国編集部による長期テスト

初回 EV時代も魅力的なブランドであり続けたい

「ブランドを、本来あるべきポジションへ戻したい。人々の心の中へ。愛される、本当のフォルクスワーゲンとして」

CEOのトーマス・シェーファー氏は、ブランドの人気を取り戻し、バッテリーEV時代にも魅力的な存在であり続けたいという意志を、AUTOCARの取材で述べている。それを具現化したモデルの筆頭が、このID.バズだろう。

フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイル(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイル(英国仕様)

沢山の人から慕われる、伝説的なモデルのイメージが、新しいバッテリーEVへ落とし込まれている。思わず笑顔になるような見た目でありながら、洗練され、技術的な水準が高い点も大きな特徴だろう。

近年のモデルラインナップへ興味を示さなかった、古くからのブランド・ファンの心にも、響くだろうか。バッテリーEV時代にも、競争力の高いワンボックスカーとして、多くの支持を集めることはできるだろうか。

筆者は、幼い頃からフォルクスワーゲンに親しんできた。生まれたばかりの自分を、病院から自宅へ連れ帰ってくれたのは、父が運転する2代目ゴルフ GTI。オリジナルのタイプII、ワーゲンバスで、家族との休日を過ごしてきた。

実家の駐車スペースには、5気筒エンジンのゴルフが当たり前のように停まっていた。現在も、最新のゴルフ GTIと2代目ポロが停まっている。

自分が免許を取ってからは、廃車の山からT3 トランスポーターを救出し、復活させた。最初のクルマは、1972年式のタイプI、ビートル。様々な困難を乗り越え、10年以上も大切にした。

フォルクスワーゲンを未来へ導く電動ワンボックス

自動車ジャーナリストという立場で、特定のブランドへ肩入れすることは基本的にない。だが、フォルクスワーゲンを特別視してきた過去は、否定しない。

最近の同社は、あまり風当たりが良くない。最新のバッテリーEVには、ソフトウエアの不具合が報告されている。ダッシュボードまわりの使い勝手にも、不満がある。弱点を補えるような個性を備えていたり、一目惚れするデザインをまとうわけでもないだろう。

フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイル(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ SWB 77kWh プロ・スタイル(英国仕様)

従来ほどの、カリスマ性はないように思う。50年後、Tクロスで気ままに自動車旅行をした日々を懐かしむことはあるだろうか。友人とカウンターでビールを呑みながら、ID.4のインテリアの思い出話をするだろうか。

ID.バズなら、その可能性はあるかもしれない。歴代の同社のワンボックスも、多彩な思い出や裏話を生んできた。多くの人の記憶へ残る歴史的なモデルへ強い影響を受けた、大胆な見た目のこのクルマは、ブランドを望ましい未来へ導く存在といえるだろう。

フォルクスワーゲンは、ブランドの歴史の重要性も認めている。パサートやゴルフが、バッテリーEVへどのようにバトンタッチしていくのか、ビジョンも立てられている。

間もなく登場する小さなID.2も、未来を指し示す1台だ。運転の楽しいコンパクト・ハッチバックとして、わたしたちを喜ばせる精神を宿すことを、期待している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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