「新参」の戦いは楽じゃない 電動システムはBYD譲り KGMトーレス EVXへ試乗

公開 : 2024.04.13 19:05

エンジン版より車内は静か 乗り心地は良い

ダッシュボード上には大きなモニターパネルが載り、グラフィックは鮮明。インフォテインメント・システムの反応は少々鈍いようだが、求められる機能は網羅している。インターフェイスのデザインも、理論的でわかりやすい。

車内の確認を終えたところで、一般道へ出てみよう。電動パワートレインはBYD由来で、基本的に電費は優れるようだ。航続距離は461kmが主張される。

KGMトーレス EVX(欧州仕様)
KGMトーレス EVX(欧州仕様)

0-100km/h加速は8.1秒で、ライバルを驚かせるほど速いわけではないものの、充分活発。パワーデリバリーはスムーズで、不意に強くアクセルペダルを踏まない限り、予想通りに走ってくれる。

内燃エンジン版のトーレスと異なり、風切り音やロードノイズは抑えられ、走行中の車内は静か。フロア下の駆動用バッテリーが、外界との隔離性を高めている。

同様に、内燃エンジン版では硬すぎると感じたサスペンションも、車重が増えるEVXでは印象が違う。荒れたアスファルトで神経質にならず、大きな凹凸でも落ち着きを失いにくい。バタバタというノイズも小さい。

大きくうねるような路面では、ボディに揺れが残るものの、基本的には安定している。ステアリングはダイレクト感が弱く、正確性も高くないが、速めにコーナーを旋回させても、感心するほどボディロールは抑えられていた。

試乗車が履いていたネクセン・タイヤは、積極的な旋回を受け止めるほどのグリップ力はない。勢いの良い発進加速時も、スピン仕掛けていた。もう少し粘るタイヤを履いても良いだろう。

ニーズには応えられるが、戦いは楽ではない

電動クロスオーバーが次々とリリースされる中で、トーレス EVXの戦いは決して楽ではない。バッテリーEVを検討するユーザーは、新規ブランドにも視野を広げる傾向はある。だが、BYDやフィスカーなども、同様に彼らの選択肢へ加わるはず。

広い車内空間と荷室、標準装備など、ライバルに伍せるトーレス EVXの強みもなくはない。航続距離は短くなく、電動クロスオーバーを必要とする人のニーズには応えられるだろう。とはいえ、高めの価格と冴えない動的能力が、明るくない影を落としている。

KGMトーレス EVX(欧州仕様)
KGMトーレス EVX(欧州仕様)

◯:航続距離と急速充電能力 内燃エンジン版と比べて優れる洗練性
△:特に加速時で不足しがちなトラクション お高めの価格

KGMトーレス EVX(欧州仕様)のスペック

英国価格:4万4495ポンド(約841万円)
全長:4700mm
全幅:1890mm
全高:1720mm
最高速度:175km/h
0-100km/h加速:8.1秒
航続距離:461km
電費:5.3km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1915kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
バッテリー:73.4kWh(実容量)
急速充電能力:145kW
最高出力:206ps
最大トルク:34.5kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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