ポルシェ・パナメーラ・ターボへ試乗 平衡感覚が狂う勢い 「毎秒13回」可変のエアサスに感動

公開 : 2024.03.24 19:05

パナメーラの頂点に据えられた、プラグインHVの「ターボ」 1秒間にエアスプリングを13回制御するPARサスが目玉 2360kgを軽く感じさせる 英国編集部が評価

1秒間に13回も制御されるエアスプリング

1枚目の写真に違和感をお感じだとしたら、読者の目はかなり鋭い。車重2360kgのビッグサルーンが、サーキットで勢いよく旋回しているにも関わらず、殆どボディロールしていないことにお気づきだろうか。

もちろん、CG加工ではない。AIの生成画像でもない。ポルシェ・アクティブ・ライド(PAR)という、最新のサスペンションが叶える技だ。

ポルシェ・パナメーラ・ターボ(欧州仕様)
ポルシェ・パナメーラ・ターボ(欧州仕様)

PARは、アンチロールバーを不要とした。電気モーターで稼働する油圧ポンプが備わり、エアスプリングに内蔵されたアクチュエーターを介し、空気圧を調整。前後左右、個別に硬さと車高を調整することを可能にしている。

今回の試乗会場には、その技術のデモのため、1台のパナメーラが置かれていた。アメリカ車のローライダーさながら、踊るように跳ねてみせた。このパワフルさで、ボディロールを完全に打ち消すという。加減速時の上下動、ピッチも同様に抑え込む。

むしろコーナリングでは、内側へボディを傾けることすら可能。舗装が剥がれたような荒れた路面では、瞬間的に任意のタイヤを上下動させ、しなやかに路面へ追従させることもできる。エアスプリングは、1秒間に13回も制御されるとのこと。

このPARは、ステアリングとアクセル、ブレーキ、加速度に加えて、サスペンションに実装されたセンサーのデータをもとに動作する。カメラ映像を解析し、事前に制御するシステムも存在するが、精度の低さを理由にポルシェは採用していない。

ツインスクロールからシングルスクロールへ

その実力を披露するべく、ポルシェの技術者は、複雑に波打った路面でパナメーラを試走。低くない速度で走るさなか、タイヤは激しく上下へ動きつつ、ボディは見事にフラットに保たれていた。感動的なほど。

筆者も、加減速やスラロームなど、激しくパナメーラを操ってみたが、不思議なほどにボディは水平で平然。PARが非装備のパナメーラで同じことをすると、確かに揺れは大きい。それでも、ライバルより姿勢制御は優秀といえたが。

ポルシェ・パナメーラ・ターボ(欧州仕様)
ポルシェ・パナメーラ・ターボ(欧州仕様)

サスペンションの有能ぶりを実感した後、スペイン南西部のモンテブランコ・サーキットへ移動。システム総合680psの実力を確かめる番だ。

現在のパナメーラのフラッグシップとなる「ターボ」には、長いサブネームが付いていないが、プラグイン・ハイブリッド。電圧400Vのシステムが実装され、そのぶん車重は軽くない。それでも、すこぶる速い。

スポーツプラス・モードは、駆動用バッテリーが充電されている状態が前提。V8エンジンは迫力のサウンドを奏でるが、排気ガス規制に対応したマフラーのため、排気音は少しこもった響きだ。

ターボチャージャーは、アップデート前はツインスクロールが2基組まれていたが、新たに小型のシングルスクロールへ置換された。触媒が有害物質を効率的に除去できる温度へ、短時間に上昇させることが狙われている。

そのぶん、ターボラグは僅かに長くなる。それは、ハイブリッドのアシストが解消するという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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