BMW M3/M4

公開 : 2014.07.26 19:10  更新 : 2017.05.29 17:59

高機動操縦性はBMWあるいはM GmbHらしいものに躾けられている。基本的には、そのシャシーはリヤの安定性を軸にしたもので、進入時に思い切りブレーキを残して、それを操舵と重ね合せる形で抜いていっても、小回り旋回を得意とする小型車の高性能版のように、くるりと小さく回り込むようなそぶりは見せない。これはDSCを機動性重視のM DCTモードにしても同じ。完全解除でもブレーキ配分系の制御が割り込んで、ブレーキングドリフトには持ち込めない様子だった。

とはいえ油断は禁物だ。先代E90/E92系M3と同じく、現行のM3/M4も馬力トルクの猛烈に対してリヤのトラクションが不足気味。それゆえパワーオンはしっかりとリヤ荷重が掛かる体勢を作ってからでないと、馬力が制御で絞られるか、あるいは簡単にお尻がサヨナラする。しかも、そうなった際は暴れる体躯を抑え込むのに多少の手間が要る。乗用車の範疇に収めておくべく、M3/M4はアシまわりの弾性もそれなりに盛りこまれている。電制ダンパーは幅広い乗り心地を減衰力の可変で実現すべく、組み合わされるバネは柔らかめだから、過渡はダンパーで抑え込んでも、絶対的なロールとピッチ量は少なくない。そして車重は1.6t超。もはやM3/M4は身軽に身体を運ぶ踊り手ではない。

それと同時に、MがMである所作も認められた。どの運転モードでも、機動性キャラクターは統一される。5シリーズのようにモードによって旋回の性格をがらっと変えるエンターテインメント性は盛り込まれず、これが我々の奉じる高性能車の振る舞いだとするM GmbHの主張が、隅々まで敷衍されているのだ。また、この試乗時には了解できなかったが、Mが基準車と根本的に異なっているエンジニアリング上の優位点もあった。そのことは別項のアルピナ試乗記で明らかにしよう。

最後にM3セダンとM4クーペの挙動の違いについて。それは指摘できるような所作の差となっては現れなかった。ドアの数などものともしないほどに、BMWとM GmbHは車体後部の三次元剛性を構築する手練れなのだ。

(文・沢村慎太朗  写真・市 健治)

BMW M3BMW M4

価格 1104.0万円
0-100km/h 4.1秒
最高速度 250km/h(リミッター)
燃費 12.0km/ℓ
CO₂排出量 194g/km
車両重量 1640kg
エンジン形式 直6DOHCツインターボ, 2979cc
エンジン配置 フロント縦置き
駆動方式 後輪駆動
最高出力 431ps/7300rpm
最大トルク 56.1kg-m/1850-5500rpm
馬力荷重比 263ps/t
比出力 145ps/ℓ
圧縮比 10.2:1
変速機 7段DCT(M DCT)
全長 4685mm
全幅 1875mm
全高 1430mm
ホイールベース 2810mm
燃料タンク容量 60ℓ
荷室容量 480ℓ
サスペンション (前)マクファーソン・ストラット
(後)5リンク
ブレーキ (前)φ380mmVディスク
(後)φ370mm Vディスク
タイヤ (前)255/40R18
(後)275/40R18

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