ロータス23より美ボディ? 他に例がない公道での「没入体験」 唯一のナンバー付きエメリソン(2)

公開 : 2024.03.31 17:46

他に例がないほど公道で運転に没入できる

車内には、スペースフレームの骨格が露出。3スポークのステアリングホイールが正面に伸びる。ダッシュボードには、時速120マイル(約193km/h)まで振られたスピードと、6500rpmからレッドラインのタコメーターの他に、2枚の補助メーターが並ぶ。

チョークレバーとバッテリーのカットオフスイッチと、ライト用のスイッチなどがいくつか。スパルコ社製のハーネスを固定すると、足もとには自然とペダルが来ている。直接目視できないものの、3枚の間隔は完璧といえ、ヒール&トウしやすい。

エメリソン(1961年/英国仕様)
エメリソン(1961年/英国仕様)

燃料ポンプを始動させ、イグニッション。驚きで声を漏らすほど、エグゾーストノートはやかましい。アイドリング状態でも耳をつんざき、文化的とはいえないだろう。

クラッチもアクセルもペダルは軽く、コベントリー・クライマックス社製の4気筒ユニットは、遠慮なくボリュームを増大させる。シトロエン社製がベースだという、ストレートカットのギアからも唸りが高まる。

シフトレバーは、ステアリングホイールの右側。少し不規則なゲートが、ダッシュボードに刻まれている。アクリル製のスクリーンが、顔をある程度保護してくれる。

クラシックなF2マシンを公道で走らせるという気分は、今でも刺激的。ノイズがうるさく、レッドラインまで回そうという熱意は収まっていくが、公道でこれほど運転へ没入できるモデルは他にほぼ存在しないだろう。

魅惑的なロードゴーイング・レーサー

面白いことに、初代ロータス・エリーゼの体験にも通じている。とはいえ、感覚の濃さは50%増し。やはり、JCM 700のホームはヒルクライム・コースだ。

ステアリングホイールには、常にフィードバックが伝わり、手のひらは震え続ける。コーナーへ侵入すると、緩やかなアンダーステア。殆どボディロールは伴わない。ステアリングラックのレシオはクイックすぎず、高速域でも緊張感は高くない。

エメリソン(1961年/英国仕様)
エメリソン(1961年/英国仕様)

乗り心地は、想像以上にしなやか。凹凸が目立つ地方の道でも、不安定になるような揺れはなく、不満ない速度で流せる。ブレーキにはサーボが備わらないが、充分に力を込めれば制動力は確か。ペダルには、しっかり感触が伝わってくる。

高速道路に入り、110km/hへ加速。アンダーステアが増す。オーナーのデビッドは、リミテッドスリップ・デフの効きが強すぎることが原因だと考えている。それなら、修正は難しくないだろう。

サーキットが主戦場のF2マシンをヒルクライムで戦わせるため、裏技的な手法で作られたエメリソン。その沼のように惹き込まれる体験を知り、もっと評価されるべき1台だったという想いが増す。なんと魅惑的な、ロードゴーイング・レーサーなのだろう。

協力:ポール・マッティ氏、シルバーストン・サーキット

エメリソン(1961年/英国仕様)のスペック

英国価格:−ポンド(新車時)/10万ポンド(約1890万円/現在)
生産数:1台
全長:3520mm
全幅:1400mm
全高:820mm
最高速度:188km/h(予想)
0-97km/h加速:6.0秒(予想)
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:519kg
パワートレイン:直列4気筒1460cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:99ps/6300rpm
最大トルク:12.5kg-m/4650rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

唯一のナンバー付きエメリソンの前後関係

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