557psの「稲妻」で興奮は得られる? マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレへ試乗 魅力は少なくない

公開 : 2024.03.20 19:05  更新 : 2024.09.03 06:51

マセラティの高級SUVも電動化へ 航続距離は500km ツインモーターで557ps 高級感に不足ないリサイクル素材 有能なシャシーを使い切れるエアサス 英編集部が評価

高級感に不足ないリサイクル素材

電気自動車は、従来のような興奮を得にくいといえる。頭を悩ませたマセラティは、稲妻を意味するフォルゴーレというサブネームで、気持ちを高ぶらせようと決めた。

既にグラントゥーリズモ・フォルゴーレも発表済みだが、大型SUVのグレカーレにも、いよいよそれが追加される時が来た。ブランドがかける期待は大きく重い。4シーターのグランドツアラー・クーペより、数が売れるであろうモデルだからだ。

マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)

グレカーレの登場は2022年だが、早々にフォルゴーレが投入されたことからも、その熱量は伝わってくる。ライバルとなるのはメルセデス・ベンツEQE SUVやポルシェ・マカン・エレクトリック、アウディQ6 e-トロンなどになる。

見た目は、内燃エンジンで走るグレカーレと大差ない。ラジエターの構成が異なるため、フロントグリルは最適化され、多くの穴が塞がれた。フロントフェンダー後方の3連エアアウトレットは、LEDのイルミネーションに置き換えられている。

インテリアは、豪華で上品なマセラティ。だが、持続可能性に重きが置かれるバッテリーEVなだけに、本皮以外の素材も幅広く設定されている。

試乗車に選ばれていたのは、エコノリーというナイロン。漁猟で使われなくなった網などを再利用したクロスで、肌触りはとても上質。リサイクル素材でも、まったく高級感に不足はないようだ。

航続距離は500km ツインモーターで557ps

車内は、内燃エンジン版のグレカーレと同等に広い。乗員空間は殆ど犠牲になっておらず、荷室は535Lと同値。97kWhの容量を持つ駆動用バッテリーが、フロア下に搭載されているとは感じにくい。

満充電での航続距離は、カタログ値で500km丁度。価格で近いEQE SUV 500は548kmで、マカン・ターボ・エレクトリックは590kmが予想されており、若干見劣りすることは事実だろう。

マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)
マセラティ・グレカーレ・フォルゴーレ(欧州仕様)

急速充電能力は、最大150kWまで。残量20%から、最短30分で80%まで回復できる。

駆動用モーターは、1基278psのユニットが前後に載り、四輪駆動。システム総合での最高出力は557psとなり、V6エンジンのグレカーレ・トロフェオより27ps勝る。その代わり、車重は450kg重い2480kgに達した。

0-100km/h加速は4.1秒で、3.8秒のトロフェオに届かない。とはいえ、多くのライバルより鋭いダッシュ力は備える。マカン・ターボ・エレクトリックは639psと、さらに上回るようだが。

すべてのマセラティはノイズを発する必要がある、という同社の考えのもと、グレカーレ・フォルゴーレには人工音が与えられた。スピーカーから安っぽいエンジン音が響くのかと心配したが、電気的で未来的なサウンドだった。運転の仕方で、音色が変わる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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