ずさんな対応に顧客激怒「もう買わない」の声 何がまずかった? ジャガーIペイスで充電機能に制限、英国

公開 : 2024.03.20 06:05

ジャガーIペイスの英国在住オーナーから「怒り」の声が上がっている。他社製充電アプリが突然使えなくなっただけでなく、その連絡方法にも問題があったようだ。

他社製充電アプリが使えない! 突然の「変更」に怒りの声

ジャガーのEV「Iペイス」の充電機能をめぐり、英国内でオーナーから怒りの声が噴出している。車載ソフトウェアの変更(アップデート)により、他社製の充電アプリを利用できなくなったためだ。

Iペイスでは、電気料金の安い時間帯(深夜など)に自動的に充電する “スマート充電” が可能だ。アプリを通じて、希望する充電量や時間をあらかじめ設定しておけば、効率的に充電することができる。しかし、突如として多くの他社製アプリで互換性がなくなり、実質的にオーナー負担が増える形となった。

日本仕様のジャガーIペイスへの影響は未確認。オーナー様など、もし情報があればコメント等で共有していただけますと幸いです。
日本仕様のジャガーIペイスへの影響は未確認。オーナー様など、もし情報があればコメント等で共有していただけますと幸いです。

日本国内での影響は未確認だが、YouTubeやSNS、ネット掲示板では英国のオーナーたちが注意を促している。

現在確認されている限り、英国の電力会社オクトパス・エナジーが展開する充電アプリ「インテリジェント・オクトパス・ゴー(Intelligent Octopus Go)」などが利用できない状態だ。

別の料金プランへ移行したり、メーカーであるJLR(ジャガー・ランドローバー)独自の充電アプリへ乗り換えたりしなければならない。

英国在住のIペイス・オーナー、アイルサ・チャンドラーさんは、これまでオクトパス・エナジーのアプリを使って自宅で充電してきたが、上位の料金プランから標準的な料金プランへ移行したことで不便を強いられていると語った。

「他の多くの人と同じように、わたしも7kWの家庭用充電器を使っています。オクトパスが現在提供している4時間の料金プランでは、たったの30%しか充電できません」

「以前は(上位の料金プランでは)充電量と時間さえ設定すれば、わたしが何もしなくても、可能な限り安く充電してくれました」

「充電量が減ると、公共の充電器を使うか、高い料金を支払わなければいけません」

「なぜこんなことになったのかわかりません。これではまるで後退です」

同じような意見が、数多くのオーナーによって海外オンライン・フォーラムに書き込まれている。ある人は「顎が外れた」と驚き、またある人は「いまだに理解できない」と首をかしげる。先週Iペイスを手に入れたばかりだという人は、「柔軟性の欠如は致命的だ」と語った。また、単に「furious(激怒している)」と書き込む人もいた。

目的は「顧客データ守るため」 でもメーカーから直接連絡なし?

車載ソフトウェア変更の理由についてJLRは、「サードパーティ(他社)製アプリケーションが増え続ける」中で「お客様のデータを可能な限り安全に守り続ける」ための取り組みの一環だと答えた。

「その結果、一部のスマート充電料金プランが影響を受けます。エネルギー会社と協力し、お客様へお知らせをしています」

ジャガーIペイス(英国仕様)
ジャガーIペイス(英国仕様)

JLRによると、サードパーティからのアクセスを遮断したのは、車両データが「非公式アプリを通じて取得される」可能性があったためだという。また、「非公式アプリを使用した結果被った損失や損害に対する」オーナーの保証の権利を強固にすると述べた。

JLRは最近、増加傾向にある車両盗難対策としてセキュリティ強化に取り組んでおり、今回の顧客データ保守もその一環と考えられる。

しかし、オーナーの不満点の1つは、こうした取り組みの “伝え方” である。チャンドラーさんは、アクセスが遮断されるわずか数時間前に知らされたと言う。彼女だけでなく、複数のフォーラムで同じような話が共有されている。

さらにチャンドラーさんは、その連絡がJLRではなくオクトパス・エナジーからだったことに憤りを感じている。

「軽視されていると感じます。顔を殴られたような気分です。ジャガーのような規模と名声のある組織が、なぜ電力会社経由で大切な連絡を行うのでしょうか?」

弊誌はJLRに、なぜ顧客に直接連絡しなかったのか尋ねているところだ。本稿執筆時点では、コメントは返ってきていない。

今、改めてIペイスを購入するかどうかをチャンドラーさんに尋ねると、彼女はこう答えた。

「いいえ、買いません。少なくとも、ジャガー以外の新しいクルマに買い換えるでしょう。今は本当に印象が悪いからです」

「このクルマのことが大好きなだけに残念です。運転するのがとても楽しい。良いクルマをたくさん試しましたが、走りに関してはこれが一番好きです」

「JLRはせめて、『ご迷惑をおかけしていることは承知しています。この件についてオーナー様同士で意見を共有できるよう、カスタマーパネルを設置します』……というように伝えるべきだったと思います。そうすれば、信頼を築くことができたでしょう。自分のクルマを大切に思い、EVを大切にしている人たちを獲得できたはずです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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