ベントレー初のEV「特徴的」デザインとは? 新しいアイデアで違いを生み出す超高級車ブランド

公開 : 2024.03.20 06:25

ベントレー初のバッテリーEVを担当するデザイン責任者にインタビュー。求められる「個性」やVWグループ内での協力関係について話を聞いた。

EVへの移行期を背負うデザイナー

ロビン・ペイジ氏は、英国の自動車メーカーであるベントレーのデザイン責任者に就任して5か月になる。ボルボに在籍していた時期もあるが、ベントレーに「一生をかけていいる人」と呼んでいいかもしれない。

キャリア初期の17年間をベントレーで過ごし、2001年から2013年にかけてインテリアデザインの責任者に上り詰めた。このとき、コンチネンタルGTを世に送り出している。

ベントレーは2025年、初のEVを導入する予定だ。
ベントレーは2025年、初のEVを導入する予定だ。

ベントレーは2025年、同社初のバッテリーEVを導入し、2030年までに5車種の電動モデルを揃えていく計画だ。ラインナップ切り替えの重要な時期だが、最近、複数のデザイン責任者が短期間で去っている。

ペイジ氏は弊誌の取材で、今は安定しており、高い創造性が求められていると語った。

ベントレー初のEVはどんなデザインに?

――ベントレーのEVモデルの第一弾は、どの段階まで進んでいるのですか?

「現在、最後の改良を終えているところですが、さまざまな理由で時間がかなりタイトになっています。ほとんどの作業はわたしが着任する前に終わっていましたが、影響を与える機会もいただきました」

ベントレーのデザイン責任者、ロビン・ペイジ氏
ベントレーのデザイン責任者、ロビン・ペイジ氏

――新しい仕事に就くと、何かを変えたくなるものですか?

「必ずしもそうではありません。ですが、まるでモーターショーのスタンドで初めて見るような新鮮な気持ちでプロジェクトに臨むのは確かに面白い。細部の変更はいくつかありますが、普通に2台目、3台目と進めています」

――ベントレーのEVのデザインには特徴が必要だとおっしゃっていましたが、どのような特徴ですか?

「EVにはフルオープンのグリルが必要ないという事実を正直に受け止める必要があります。そうすれば、新しいタイプのフロントデザインやライトに挑戦できるでしょう。もちろん、クルマは遠くから見ても特徴的でなければなりません。新しいフル・エレクトリックのベントレーがどんなものかを人々に認識してもらいたいのです。ヘリテージカーのように見えるだけでは失敗です」

――それでも、ベントレーのヘリテージを十分に考慮しているんですよね?

「その通りです。歴史上の成功したベントレーには象徴的な要素があります。それを無視すれば、アイデンティティを失い、わたしが作ったものはベントレーではないと言われるでしょう」

VWグループ内での協力関係

――新しいデザインをコンセプトカーで示す計画はありますか?

「ベントレーの新しいデザイン表現を示したり、新しいアイデアを試したりできるようなクルマを作りたいと強く思っています。しかし、どのようなコンセプトであれ、慎重にタイミングを計らなければなりません。誰かがアイデアをコピーし、わたし達よりも早く製品化してしまうかもしれないという懸念が常にあるからです」

ベントレーの少量生産車「バトゥール」
ベントレーの少量生産車「バトゥール」

「ベントレーのような企業がコンセプトを使うには2つの方法があります。バトゥールのような特別な少量生産車を作る方法と、イベントステージでワンオフ車として発表する方法です。現時点では、何が最善かを話し合っているところです」

――ボルボに10年間在籍しましたね。トップデザイナーの理想的な在職期間は?

「5年から10年というのが、とてもいい期間だと思っています。成果を上げるのにも、クルマを無事に製品化するのにも時間が必要です。当社CEOのエイドリアン・ホールマークもそう考えていると思います」

――VWグループの他のメンバーと協力する自由はありますか?

「自由度は高いですが、ホイールベース、オーバーハング、衝突構造など、重要なポイントを尊重しなければなりません。しかし、まだ大きな余地が残っています」

「今のようにアウディと密接に協力していることは強みになります。ポルシェと組んでいたときにはなかったチャンスが生まれます。ベントレーは収益性が高く、自給自足が可能であるため、グループ内でも大きな地位を得ています。素晴らしい場所にいると言えるでしょう」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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