とろけるように回るV6 ランチア・アウレリア B10 強い個性は飛行機から ブリストル405(2)
公開 : 2024.04.06 17:46
強いコダワリで生み出された、ブリストル405とランチア・アウレリア B10 1950年代にピークを迎え、圧倒的な製造品質を誇った両社 英国編集部が2台を振り返る
もくじ
ー飛行機に影響を受けた個性の強いボディ
ーとろけるように回転するV6エンジン
ー405の最大の美点はステアリング
ー両社が追求した細部へのコダワリが魅力
ーブリストルとランチア 2台のサルーンのスペック
飛行機に影響を受けた個性の強いボディ
1950年代のブリストルとランチアは、エンジンに誇りを持っていた。どちらも耐久性が高く、モータースポーツでも確かな活躍を残している。
ブリストル405のボンネットに収まるのは、BMW由来であることを隠さない、スチール製ブロックにアルミ製ヘッドが載った直列6気筒。優れた材料へ置換するなど、航空機で得た知見が投入されている。
スロットルリンケージには、高剛性で高精度なボールジョイントを採用。アンダースクエアのシリンダーを持ち、2.0Lとしては体積がある。恐らく、当時は世界最高のユニットの1基だった。
ランチアの1.8L V型6気筒エンジンは、シングルキャブレターで見た目は控えめだが、ミッレ・ミリア・レースでの栄光とイメージが重なる。バルブカバーはブラックに塗られ、アルミ製オイルサンプには冷却用フィンが並ぶ。
小さなエンジンのおかげで、フロントノーズは405より低め。そのぶん、車内空間も広く取れている。
405のスタイリングは個性が強い。ボンネットは長いものの、4864mmと全長も長い。フロントフェンダーの後ろには、電気系統とスペアタイヤが収納されている。これは、飛行機から影響を受けた配置といえた。
リアドアは狭く、乗降性に優れるとはいえないが、中に入れば居心地は良い。レザーとウォールナットが惜しみなく用いられた内装は、隅々まで高級感が漂う。シートも上質なレザー張りで、掛け心地は文句なし。
メーターパネルは、この時代のブリストルで共通するデザイン。ここにも、飛行機の影響を感じ取れる。
とろけるように回転するV6エンジン
アウレリアのインテリアは、見比べると少し退屈だろう。シートは魅力的ながら、目立った装飾はなく、どちらかといえば実用主義といえる。スロットルの調整レバーとチョークのライト、水平に動くサイドウィンドウのワインダーなどが特徴だ。
ステアリングホイールはクリーム色。グリーンで文字がデザインされた、メーターが面白い。タコメーターは標準装備ではなかった。ライトやウインドウ・ウオッシャー、ワイパーなどのスイッチが整列している。
広い開口部と同じく、乗員空間は、高さ方向にも前後方向にもゆとりがある。トランスミッション・トンネルはなく、プロペラシャフト用の膨らみがあるだけ。荷室は深く大きい。フロア部分に、その下へ搭載された燃料タンクの給油リッドが配されている。
1.8L V6エンジンの始動は、キーを捻って、スターターボタンを押すだけ。優れた点火順序も手伝い、極めて滑らかでとろけるように回転する。
走行中は、僅かにドライブトレインからの振動を伴う。スライディングピラー式サスペンションの癖といえる、やや不自然なステアリングの反応も感じられる。
シフトレバーは、ステアリングコラムから伸びる。1速が一番奥側で、動きは重く、しっかり腕を動かして選ぶ必要がある。