とろけるように回るV6 ランチア・アウレリア B10 強い個性は飛行機から ブリストル405(2)

公開 : 2024.04.06 17:46

405の最大の美点はステアリング

106psを発揮する、405の直6エンジンも滑らかで、意欲的に吹け上がる。トリプル・ソレックスキャブレターが組まれ、柔軟でたくましい。シフトレバーの動きは軽くスムーズ。レシオの比率もちょうど良く、活発な回転域を保ちやすい。

最高出力はアウレリアより2倍近く大きいから、確かにキビキビ走る。それでも、想像したほど明確な違いはないようだ。

シルバーのブリストル405と、ブラックのランチア・アウレリア B10
シルバーのブリストル405と、ブラックのランチア・アウレリア B10

2速で引っ張れば、5000rpmで100km/hに達する。耳障りのいい、ドライな吸気音と、バルブトレインのメカノイズが放たれる。3速では135km/hを超えるが、オーバードライブを選び、3500rpm前後を保った巡航が、スイートスポットだろう。

405の最大の美点はステアリング。低い速度域でも重すぎず、高めのギア比でレスポンスは軽快。切り込んでいっても感触がダルになることはなく、意欲的なコーナリングラインを辿れ、優れたシャシーバランスを引き出せる。

他方、アウレリアのステアリングは、ロックトゥロック4回転。数字としてはかなりスローだが、実際に乗ってみるとそんな印象はない。

カーブでボディは多めにロールするものの、上品に旋回していく。前後の重量バランスが50:50と優秀で、ステアリングへ掛かる負荷は小さい。不自然な振動もなく、路面を問わず高い速度域を保てる。56psと、限られたパワーを補うように。

両社が追求した細部へのコダワリが魅力

ブリストルは、4年間に405を合計308台しか生産しなかった。コーチビルダーのアボット社が提供した、43台のドロップヘッド・クーペを含めて。

モノコック構造で3.5Lエンジン・モデルの計画が立ち上がっていなければ、405がBMWの影響を受けた、最後のブリストルになっていた可能性はある。1960年代を迎える前に、親会社は自動車製造に対する熱意を失い始めていた。

シルバーのブリストル405と、ブラックのランチア・アウレリア B10
シルバーのブリストル405と、ブラックのランチア・アウレリア B10

アメリカとソ連による冷戦が激しくなる中で、航空機産業は復調。ブリストルも、本業が忙しくなっていた。

他方、1907年に創業したランチアは、生産効率や収益性を高める設備投資を怠っていた。モータースポーツでの栄光にすがる余り、限られた資金は正しく投じられず、1960年代を向かえる頃には勢いを失っていた。

結果として、ランチアもブリストルも、安価な量産モデルの台頭に苦しめられた。品質や高級感では秀でていても、実際のところ、クルマとしての機能に大きな違いはなかった。商業化が加速した時代に、コスト管理の重要性を痛感したことだろう。

それでも、両社が追求した細部へのコダワリが、クラシックカーとしての魅力を生んでいることは間違いない。

協力:SLJハケット社、ミトカ・エンゲブレッツェン氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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