おかえり「V8エンジン」! でも最後? ポルシェ・カイエン Sを深掘り(1) 末永く所有したい

公開 : 2024.03.30 09:45

11:00/ウェザビー 警報級の土砂降り

グレートブリテン島を340kmほど北上し、ウェザビーという街で小休憩。カイエン Sにはすっかり慣れたが、天候は悪化している。

行く先の空模様を確認するため、フォトグラファーのマックス・エドレストンがスマートフォンを見つめる。さらに北のノーサンバーランド州は、もっと酷いらしい。警報が出ているくらいだ。

ポルシェ・カイエン S(英国仕様)
ポルシェ・カイエン S(英国仕様)

本来なら、キールダーの森を貫くワインディング、フォレスト・ドライブを走りたいところなのだが、冬季閉鎖中とのこと。その道は東西に30kmほど続き、グレートブリテン島で最も標高の高いポイントを通るルートの1つ。走りがいのある区間だ。

クラシックカーが対象の、キールダー・フォレスト・ラリーでは、コースの一部にもなっている。四輪駆動に474psを発揮するV8エンジンの組み合わせなら、きっと存分に楽しめるだろう。写真映えすることも間違いないのだが。

15:00/ノーサンバーランド 予報通りの悪天候

さらに170kmほど走り、ノーサンバーランド州へ入る。キールダーの森は目の前だが、天気は予報通り土砂降り。外での撮影は難しい。

早めにホテルへチェックインし、ニュース・アプリを再びチェック。Xのタイムラインへ目を通す。別の仕事を進め、19:00過ぎに夕食と一緒にワインをいただいた。

ポルシェ・カイエン S(英国仕様)
ポルシェ・カイエン S(英国仕様)

2日目 7:00/ノーサンバーランド V8へ向き合う

翌朝、スマートフォンのアラームを止めて、ニュース・アプリを開く。続いて、Xをチェック。

シャワーを浴びて、着替えて最新のカイエン Sに乗り込む。警報も解除され、空から雨粒は落ちていない。交通量は少ない。いよいよ、4.0L V8ツインターボと向き合う時間がやって来た。

このエンジンは素晴らしい。心の底からそう思う。フォルクスワーゲン・グループの複数のモデルに載ってきたユニットだが、カイエン Sでは61.1kg-mの最大トルクを発揮するようチューニングされている。モナコに建つカジノの警備員のように、たくましい。

ローンチコントロール・システムが実装され、0-100km/h加速を5.0秒でこなす俊足の持ち主だ。スポーツ+モードを選び、左足でブレーキペダルを踏み、右足でアクセルペダルを深く倒す。前方を確認して、左足を緩めれば、ロケットダッシュが始まる。

V8ツインターボから怒号が放たれ、後ろから蹴飛ばされたように頭がシートへ押し付けられる。スポーツエグゾーストのバルブは、ぜひとも開きたいところ。新世代のマフラーは、排気ガス規制に合致させるため荒々しさが弱い。

薄雲を通して見る太陽は、ウェルシュ・コーギーのように黄金色。優しくドラマチックな光が、筋肉質なボディに陰影を生み出す。テールライトは、真一文字。21世紀が始まる頃に抱いた、未来的なイメージと重なるのは筆者だけだろうか。

この続きは、ポルシェ・カイエン S を深掘り(2)まで。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポルシェ・カイエン Sを深掘りの前後関係

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