ポルシェ・カイエン S を深掘り(2) 快適さは上級サルーン並み 最後に「誤解」は解けるのか?

公開 : 2024.03.30 09:46

V8へ回帰したポルシェのSUV、カイエン「S」 内燃エンジンを積んだ最後の世代? 上級サルーンのように快適 繊細に届くフィードバック その実力を2日間で検証

思いのほか扱いやすい1983mmの全幅

アスファルトを覆っていた雨水は、蒸発したらしい。日差しが徐々に強まり、上着がいらないような気温になってくる。

グレートブリテン島北部、キールダーの森まで、農村を貫く一般道を走る。1983mmの全幅へ気を使うのではと憂慮していたが、ポルシェカイエン Sは思いのほか扱いやすい。運転席からの視界は広く、高めの目線で対向車とのすれ違いは難しくない。

ポルシェ・カイエン S(英国仕様)
ポルシェ・カイエン S(英国仕様)

村人に睨まれ、スポーツエグゾーストのバルブが開いたままだったことに気付く。ボディカラーは落ち着いたアルガルヴェ・ブルーでも、主張の強い大型SUVであることは間違いない。奇人だと思われないよう、マナー良く運転する必要がある。

山奥へ進むと、スマートフォンは圏外に。フォトグラファーと筆者はトランシーバーで連絡を取り、フォトジェニックなポイントを探す。広大な自然に、アップダウンのある道が這っている。太陽の光も悪くない。

カイエン Sは安定感が高い。想像よりスピードが出ていて、牛の群れへ出くわした時、目一杯ブレーキペダルを蹴飛ばす羽目になった。ABSが小さな音を立てて介入し、グリップは担保された。

11:00/キールダーの森 繊細に届くフィードバック

キールダーの森では、小規模なモータースポーツ・イベントが開かれていた。以前はRAC(ロイヤル・オートモービル・クラブ)主催のラリーの一部だったが、現在は独立している。

1996年には、トヨタ・セリカ GT-FOURを駆ったアーミン・シュワルツ氏が優勝している。1995年は、ターボリストラクターのレギュレーションへ違反した罰として、出場が叶わなかった。

ポルシェ・カイエン S(英国仕様)
ポルシェ・カイエン S(英国仕様)

そのラリーカーは、350psを発生したとか。冷静に考えると、カイエン Sより120ps以上低い。シュワルツが運転するセリカ GT-FOURの方が間違いなく速かったはずだが、車重が2160kgあっても、このSUVもかなり速い。しかも運転しやすい。

ステアリングホイールは軽く回せ、路面からのフィードバックが繊細に届く。スポーツ+モードを選び、トラクション・コントロールの介入を弱めれば、さらに思い切り振り回せる。

カーブを鋭く旋回し、頂点を通過した辺りでアクセルオン。瞬間的にテールが沈み、後輪駆動のようにリアタイヤが蹴り出す。テールがむずがり、スキール音が小さく鳴ると、電子制御が介入してなだめられる。強烈な加速を維持しながら。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポルシェ・カイエン Sを深掘りの前後関係

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