ポルシェ・カイエン S を深掘り(2) 快適さは上級サルーン並み 最後に「誤解」は解けるのか?

公開 : 2024.03.30 09:46

13:00/ランチタイム 目的地まで最短時間のクルマ

お腹を満たす。ついついスマートフォンを手にし、ニュース・アプリを見てしまう。

英国編集部では定期的に、どのクルマがA地点からB地点まで最短時間に移動できるか、という話題になる。フェラーリSF90は桁外れにスピードが出るものの、路面には舗装の剥がれた穴があり、木陰では警察官が監視していたりする。

ポルシェ・カイエン S(英国仕様)
ポルシェカイエン S(英国仕様)

恐らく、ホットハッチの方が勝つと思う。カイエン Sも、間違いなく優勢だろう。

路面から高めのキャビンは、外界とほぼ完全に隔離されている。1番シリアスなドライブモードでも、ボディは僅かにロールするが、乗り心地は硬すぎない。一般道でも長時間快適で、結果として積極的に運転できる。

474psは、一般道では充分以上。追い越しも安全・短時間にこなせる。

15:00/スコットランド国境 平均燃費は4.7km/L

気付いたら、グレートブリテン島の北、スコットランドとの国境に辿り着いていた。景色が僅かに異なり、言葉のアクセントも違う。空き家でも、壁にスプレーで落書きされた場所は殆どない。時代が違うようだ。

ガソリンスタンドへ立ち寄る。屋根のかかった立派な場所とは異なり、古いポンプが地面から突き出ているだけ。それでも、しっかり非接触決済には対応していた。

ポルシェ・カイエン S(英国仕様)
ポルシェ・カイエン S(英国仕様)

カイエン Sが積む、V8ツインターボ・エンジンと重なるように思った。前時代のパワートレインかもしれないが、現代のカーライフにもしっかり対応している。味わい深い個性がある。

満タンになったところで、メーター用モニターの燃費計をリセットする。ここまでの平均は4.7km/L。現在の環境意識には、対応していないかも。

18:00/ロンドンへ南下 上級サルーンのように快適

カイエン Sで南下を始める。明日は大切なミーティングがあるから、今日のうちに自宅へ帰りたいところだ。今までそれを忘れていた。

道すがら、フォトグラファーと今回の自動車旅行を振り返る。ドライブモードをノーマルへ戻し、サスペンションをしなやかにする。上級サルーンのように、快適になる。

ポルシェ・カイエン S(英国仕様)
ポルシェ・カイエン S(英国仕様)

23:50/ロンドン 過度に誤解されてきた実力

クタクタで、スマートフォンを見る気にはならない。でも、不思議と頭は冴えている。

カイエン Sは素晴らしいSUVだ。速く快適で実用的。エキサイティングな旅も楽しめる。これまで、過度に誤解されてきたのかも。AUTOCARではポルシェに限らず、パワフルなSUVが素晴らしい走りを披露するという事実へ、何度も触れてきたけれど。

ポルシェ・カイエン S(英国仕様)
ポルシェ・カイエン S(英国仕様)

現実としては、カイエン Sは大型SUVとして、子どもの送迎やゴルフ場への移動手段に活躍するはず。多くの富裕層はこのモデルの魅力を知っていて、多くの契約が結ばれてきた。しかし、運転を楽しむために選ばれるモデルとはいえない。

718ケイマン GT4を提供するため、ポルシェが作っているという考え方には一理ある。
ブランド・マニアからの見られ方が、アップデート後に変わるとは考えにくい。

内燃エンジンを積んだカイエンが最後を迎えても、熱心なカーマニアが欲しがることはないかもしれない。それでも、永遠の別れの日は刻々と迫っている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポルシェ・カイエン Sを深掘りの前後関係

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