実質的なフラッグシップへ ホンダ「孤高」のサルーン上陸 11代目アコードを試す

公開 : 2024.03.23 11:05

・ホンダが発売した11代目アコードに試乗
・走りと安全装備は正常進化、「操る楽しさ」健在
・「買い」の1台か? 徹底評価する

ついにホンダのトップに君臨

2022年にレジェンドがラインナップから整理されて、ホンダの実質的なフラッグシップはアコードとなった。

もっとも、北米市場の動向に沿った形で車体サイズの拡大などの上級化を進めてきたことを考慮するならレジェンドに追い付いたアコードが取って代わったと理解してもいいだろう。

ホンダ 新型アコード
ホンダ 新型アコード

新型の車体サイズは全長5m弱であり、ほぼ先代のサイズを踏襲。プロポーションを比較しても分かるように骨格周りのレイアウトも大きく変わっていない。ちなみにレジェンドの最終モデルの車体サイズとの違いも「多少」レベルの差しかない。

フラッグシップに相応なのは車体サイズだけではない。パワートレーンはホンダの定番HVシステムとなったe:HEVを用いるが従来まで直列配置されていたモーターと発電機を並列配置し、電動系を一新。

また、エンジンはシビックと同型の直噴NA 2Lをもちいるものの、電動系の設計変更に合わせて出力とトルクを強化している。サスの基本形式は従来型と共通しているが、各輪個別に減衰力を制御する電子制御可変ダンパーと正確な車体挙動の検出する3軸6センサーを用いたアダプティブ・ダンパー・システムやハンドリングの向上を図るモーションマネジメントシステム(MMS)を導入した。

他にも国内初導入となるホンダセンシング360やグーグルを内蔵したAV&ITシステムなど、最新のホンダ車らしい技術を採用している。つまり、車格面の上位車というだけでなく、ホンダの考える今の人とクルマの関係や次世代を目指す技術面での象徴として側面を強化したのが新型の特徴である。

穏やかに主張する「操る楽しさ」

ホンダの唱える設計思想のひとつに「M-M思想」があるが、それを性能の質に展開しているような走りが印象的だ。

e:HEVは高速巡航用にエンジン直動機構を備えているが、高速巡航時以外はエンジンで発電した電力でモーターを駆動するシリーズ式で制御される。

ホンダ 新型アコード
ホンダ 新型アコード

ところがアコードはシリーズ式で稼働している時もエンジンの直接駆動を基本するパラレル式のようにエンジン回転数を制御する。速度に対するエンジン回転数の上昇は穏やかであり、ステップ変速ミッションを介した駆動とは異なるのだが、体感的にはリニアな印象を受ける。

しかも、電動ならではの踏み込み直後の加速反応の確かさと頭打ち感を抑えた伸びやかな加速の高まりが操り心地を高める。付け加えるなら全開加速でもエンジン音は穏やか。同乗者を威圧するような加速感はない。優しく力強く軽やかなパワーフィールだ。

フットワークはアジャイルハンドリングアシスト(AHA)採用以来のホンダ車の流れに沿ったもの。具体的には高速コーナーでは安定性、タイトターンではコントロール性をに優れ、速度やコーナー半径が変わっても同じような操縦感覚で御せる。操舵に連動した減速を使って操舵初期の回頭反応を高めたMMSへの進化したことで横Gに対する操縦特性の変化も少なくなり、サイズや重量を感じさせないハンドリングを実現している。

ロール制御は入りがスムーズで比較的長いストロークを使うが、収束性よく定常円旋回の挙動面の据わりもいい。当然、乗り心地も落ち着きがある。

サス制御をスポーツにセットすると荒れた路面の細かな突き上げが目立つが、それ以外のモードでは滑らかでしなやかな乗り心地を示した。なお、ごく初期の応答性を除けばコンフォートでも基本的な操安性はあまり変わらない。スポーツは嗜好で楽しむモードと考えていいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    香野早汰

    Hayata Kono

    1997年東京生まれ。母が仕事の往復で運転するクルマの助手席で幼少期のほとんどを過ごす。クルマ選びの決め手は速さや音よりも造形と乗り心地。それゆえ同世代の理解者に恵まれないのが悩み。2023年、クルマにまつわる仕事を探すも見つからず。思いもしない偶然が重なりAUTOCAR編集部に出会う。翌日に笹本編集長の面接。「明日から来なさい」「え!」。若さと積極性を武器に、日々勉強中。

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