「330i」を思い出すスムーズ加速 BMW iX1 eドライブ20へ試乗 割高感は否めない

公開 : 2024.04.11 19:05

BMW最小の電動クロスオーバー、iX1にシングルモーター版登場 66.5kWhで航続距離471km 人間工学に優れ運転は安楽 線形的で滑らかな加速 英国編集部が評価

割高感のある電動BMW 1モーターで471km

既存の自動車メーカーにとって、バッテリーEVの製造コストをいかに小さくするのかが、大きな課題になっている。内燃エンジンで走る同等のモデルより、販売価格が高いことは周知の事実だろう。

特に、ドイツ・バイエルンのエンジンメーカーだったBMWの設定には、それが表れている。新しい5シリーズは、内燃エンジン版なら約5万1000ポンド(約963万円)からだが、電気モーター版のi5は約6万8000ポンド(約1285万円)からになる。

BMW iX1 eドライブ20 Mスポーツ(英国仕様)
BMW iX1 eドライブ20 Mスポーツ(英国仕様)

大ヒットモデルのX3をベースにした電動SUV、iX3でも、約6万8000ポンド(約1229万円)する。電動のBMWへ乗り換えるには、従来以上の予算が必要になってくる。

新しいiX1に、エントリーグレードとして簡素なシングルモーター版が登場した。それでも、eドライブ20の英国価格は、4万6205ポンド(約873万円)からと、お手頃とはいえないだろう。内燃エンジンで走る520i Mスポーツと、殆ど変わりないのだから。

これまで、iX1はツインモーターのeドライブ30のみが提供されていた。最高出力は313psと、スポーツカーを追い回すのに不足ない最高出力を備えていたが、割高な印象は否めなかった。

今回のiX1 eドライブ20は、英国価格が5万ポンド(約945万円)を下回る、唯一の電動BMW。前輪駆動となり、駆動用バッテリーの容量はツインモーター版と同じ66.5kWhで、航続距離は437kmから471kmへ長くなる。

人間工学に優れ運転は安楽 線形的な加速

急速充電能力は、最大130kWまで。最高出力は203psだが、0-100km/h加速は8.6秒と充分鋭い。お手頃で高効率となれば、iX1のベストチョイスに思えて当然だろう。

17インチ・ホイールを履いたエントリーグレード、スポーツが漂わせる道具感のある雰囲気を、筆者は嫌いではない。クロス内装で、オプションのスポーツシートを組むと、好印象な車内に仕立てられる。好きなボディカラーで差別化するのも良い。

BMW iX1 eドライブ20 Mスポーツ(英国仕様)
BMW iX1 eドライブ20 Mスポーツ(英国仕様)

20年前のBMW 320とは異なり、値段の割に前輪駆動なことを受け入れなければならないが、これはやむを得ないと思う。走りに強いコダワリを持つドライバー向けとはいえないものの、iX1は人間工学に優れ運転は安楽。毎日のクルマ移動が心地良くなる。

全体的な仕上がりは悪くない。ステアリングホイールへ伝わる感触は希薄で、重み付けは若干一貫しないとはいえ、反応は教科書通りに正確。乗り心地も悪くない。

回生ブレーキには2種類の設定があり、5%だけ回生が掛かる惰性走行モードと、ブレーキペダルを踏まずに停止までできる、ワンペダル・モードを選べる。ブレーキペダルの反応は自然で、無駄に長いストロークや踏み応えが曖昧な領域もないといっていい。

アクセルペダルの反応も線形的。直感的で滑らかなパワーデリバリーは、20年前の330iを彷彿とさせる。決して速くはないが、穏やかに必要なだけ速度を増していく。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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