これが英国乗用車の「ど直球」 ヴォグゾール・ビバ HAからHCまで(1) オペルとのコラボ作
公開 : 2024.04.07 17:45
英国の乗用車のど直球といえた、ビバの誕生から60年 初代のHAから、モデル最後を飾ったHC クーペのフィレンザ 実は日本車への影響も大 英国編集部が4台をご紹介
英国ファミリーカーの定番誕生から60年
1964年6月1日、英国のエルズミアポート工場から出荷された、初めての量産車が初代ビバ HA。それ以来、1979年に3代目のHCが役目を終えるまで、ヴォグゾールの小さなサルーンは英国のファミリーカー市場で外せない一角を構成してきた。
そんな記念すべきモデルの誕生から、2024年で60年を迎える。そこで今回は、ヴォグゾールの本社が存在していたグレートブリテン島中部のルートンに、4種類のビバを揃えてみた。レッドにグリーン、ブルーと、彩りも豊かだ。
1857年にポンプと船舶用エンジンのメーカーとして創業したヴォグゾールにとって、第二次大戦後初の小型車として発売されたのが、ビバ HA。オペルとのコラボレーションで開発が進められ、ドイツではひと足早い1962年にカデット Aが発売されている。
その頃の両社は、協力関係を公式には認めなかったが、オペルは1967年まで英国では販売されていなかった。ヴォグゾールのディーラーで、事実を問い詰める人は少なかっただろう。
今回揃えた4台では、ブルーのビバがHA。ダレン・カントリル氏がオーナーの1966年式で、そのシルエットは子どもが描いたクルマのように、凸型。四角い3ボックス・スタイルを、小さなタイヤが支えている。
ビバ HAの強みといえたのが、独立懸架式のフロント・サスペンションに、ラック&ピニオン式のステアリングラック、すべての段にシンクロが備わるトランスミッションなど。大胆な買い物にも対応できる、深く大きな荷室も売りだった。
通常より20%パワーアップした「90」
端正で現代的に見えるビバ HAのデザインは、同時期のフォード・アングリア 105Eと対象的といえた。ザ・ビートルズが「プリーズ・プリーズ・ミー」を発表した頃と重なるが、あちらは少々時代遅れといえる雰囲気を醸し出していた。
同時に、男性的な容姿だと受け取られる可能性を心配したヴォグゾールは、女優のケイティ・ボイル氏を主演にしたPR映像を製作。見栄えのするクルマだと強調し、女性ドライバーの共感を集めようとした。
サイドドアの開口部は広く、ルーフラインは高め。タイトスカートを履いていても乗り降りしやすく、盛り髪をしても天井には余裕があった。
トリムグレードは、ベースがスタンダード。ヒーターと後席用の灰皿、フロントガラス・ウオッシャーを備えた、豪華仕様のデラックスという2段階が提供された。
1965年には、アンブラと呼ばれたビニールレザー内装、グローブボックス、パイルカーペットで仕立てられたSLグレードが追加。スーパー・ラグジュアリーの略で、専用のラジエターグリルと光り輝くアルミホイールなども獲得し、上級志向の流れを示した。
同年の後半には、ゼニス・ストロンバーグ社製キャブレターを載せ、アシスト付きディスクブレーキをフロントに組んだ「90」を、デラックスとSLに設定。通常より20%パワーアップし、時速100マイル(161km/h)までのスピードメーターも与えられた。