【独自】税関での盗難車摘発は年間5台! 「おもしろレンタカー」34GT-R発見が奇跡とされる理由
公開 : 2024.03.26 17:45
本牧ふ頭の大型X線検査装置で発見!
今回盗まれた34GT-Rは横浜港のとあるふ頭の保税区域にて輸出直前のコンテナ内から発見された。
警察の調べによると、輸出関連書類に不備があったので念のため大型X線装置で検査したところコンテナ内に2台の車両があることが分かったという。もう1台の青い34GT-Rも同じ時期(1月末前後)に盗まれていた。
気になるのはその「大型X線装置」での検査だ。「横浜税関Good Job!」といいたいところだが、実際、どのような検査なのか。
島国日本には全国13の港に16のX線装置がある。横浜港では現在大型X線検査装置があるのは本牧ふ頭の一か所だけである。クルマを輸出となると、大黒ふ頭のイメージが強いかもしれない。首都高の大黒PAに行ったことがある人なら首都高本線からPAに降りていく際、船積みを待つ大量の中古車や新車が並んでいる光景を見たことがあるだろう。
しかし、現在、大黒ふ頭からはコンテナの輸出はほぼない。海外に輸出される車両は「RO-RO船」(ロールオン・ロールオフ)で輸出されている。自走で船に乗り入れて下船するときも自走で降りる船のことだ。
それに伴って2023年8月31日をもって大黒埠頭コンテナ検査センターも廃止された。それまでは「横浜税関コンテナ検査センター(本牧)」と「大黒埠頭コンテナ検査センター」の2基体制で行っていた大型X線検査は令和5年9月1日以降「横浜税関コンテナ検査センター(本牧)」のみで行われることになった。
つまり検査体制自体がますます数が減って緩くなったということである。盗難車の場合、当然だが正規の方法での輸出はできないため、RO-RO船ではなくコンテナの中に隠されるようにして出されるのが一般的だ。
実際、どれくらいの盗難車がコンテナの中から発見されているのだろうか?
2023年は全国で5台、2022年はわずか1台!
輸出直前の水際検査で盗難車が摘発されることは奇跡に近い。
2006年(平成18年)からのデータ『税関における盗難自動車等の摘発台数』が税関の公式サイトにある。2023年(令和5年)は乗用車が5台/ダンプなど貨物車1台/バイク3台/建設重機1台/パーツ21となっている。財務省関税局に確認したところ「パーツ21」とは21台分のパーツという意味ではなく、単純に21個のパーツが発見されたということだそう。
日本国内における自動車本体盗難の認知件数は2000年初頭がピークで約6万件だった。
そこから約20年で急激に認知件数は減っており2020年~2021年はコロナ禍も影響して5000台前半とピーク時の約1割以下となった。しかし、その後は増加傾向にあり2023年は5762台が盗難されている。
それらの多くは海外に密輸されるわけだが、6000台近くが盗難されているのにコンテナ内で発見される盗難車はこの10年を平均しても年間5台以下。これはどういうことなのか? 税関の検査がザルなのか?
事情に詳しい輸出業者のAさんが驚くべき実情を教えてくれた。
「大型X線検査装置でのコンテナ検査は全数検査ではありません。検査対象となるのは新規の輸出業者や、JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)が発行するシッパー(輸出業者)コードの実績が少ない業者のコンテナが対象です。実績が十分にある業者のコンテナは検査をしなくてよいのです。抜け道はたくさんありますし、窃盗団も当然、それらの方法も熟知しているでしょう」