メルセデス・ベンツEQS 詳細データテスト 望外の操縦性 SUVよりMPV的 シートの操作に不満
公開 : 2024.03.30 20:25
内装 ★★★★★★☆☆☆☆
ボディの一般的ではない形状とシルエットは、キャビンにも大きな影響をもたらしている。広さはいうまでもないが、まず気づくのは奇妙な眺めだ。ボンネットが高いということはスカットルも非常に高さがあり、その周囲もちょっと奇妙なフィッティングが施されているように見える。
これだけ背の高いクルマとしては、フロントウインドウの高さがないのだが、インテリアを狭く感じさせないために、サイドウインドウの高さは確保されている。それにより、Aピラーとドアトリムには高さ調整の埋め合わせが必要になる。
フロントシートは低くすることも可能だが、よほど背が高くないとメーター類が高すぎてしまうので、そうする気は起きないだろう。さらに奇妙さを加えているのが、見下ろすことを前提としたように、すべて傾けられているディスプレイだ。そうするためにはシートを高くする必要があり、頭が天井に近くなってしまう。
幸いにも、このシートとスカットル、そして操作系との普通でない関係にも慣れることができる。とはいえ、それは妥協といったほうが正しいもので、14万ポンド(約2674万円)を超えるEV専用モデルのあるべき姿とは言えない。
そのいっぽうで、室内の仕立ては最新のメルセデスらしいものでもある。英国仕様はハイパースクリーンが標準装備で、ドライバーディスプレイとマルチメディア画面、パッセンジャーディスプレイが大面積のガラスパネルに覆われている。実体ボタンはほとんどないが、MBUXインターフェイスは頻繁に使う機能を素早く容易に呼び出せるので、使い勝手はいい。センターコンソールのショートカットを集めたパネルと、実体スイッチのシート調整部も、助けとなってくれる。
EQSサルーンと同じく、製造クオリティは一長一短。テストしたビジネスクラスは、ソフトなナッパレザーや金属調トリム、オープンポアのウッドがふんだんに使われている。ドア上部やダッシュボード、アームレストに張られたダークグレーのマイクロファイバーも、テスター陣はおおむね好印象だった。
しかし、低いところに目を向けると、価格に見合わない硬いプラスティックが気になってしまう。また、グロスブラックのパネルは、ところによって壊れやすそうな感じが否めない。
スペースについては文句なしだ。クルマ自体が巨大で、2列目が大きくスライドするので、背が高い乗員でも伸び伸びできて、しかも前席下の足入れ性もいい。その状態では3列目のレッグルームが潰れてしまうものの、2列目の広さを多少なりとも妥協すれば、背の高い大人が7人乗るのも不可能ではない。
ただし3列目は、座面に対してフロアが高くなるので、快適とは言い難い。とはいえ、子どもならば不満なく乗れるだろう。全席にUSBポートとドリンクホルダー、送風口が用意され、その点で同乗者から文句は出ないだろう。3列目のサイドウインドウは小さい。
7シーターとしての実用性に手落ちがあるとすれば、シートアレンジの操作面だろう。3列目は手動で、ボタンやレバーの位置が適切ではない。2列目は電動で、ドアに調整スイッチを備えるが、3列目の乗降時になにか障害があると判断するとスライドしないことがある。また、後方へ下げすぎると、フルにリクライニングできない。
もうひとつ、不満のタネがラゲッジカバーだ。3列目シート使用時には取り外しの必要があり、しかもそれを収納するためのスペースが用意されていない。広さやデジタル技術は十分すぎるほどあるのだが、バーサタイルなファミリーカーとしては競合車に使い勝手で劣るところが目に付くのだ。