静かで快適「大人のフェラーリ」 550 マラネロ UK版中古車ガイド(1) フィオラノでF512 Mを凌駕
公開 : 2024.04.13 17:45
21世紀の到来へ合わせるように登場した、志向のグランドツアラー F512 Mより3.5秒速くフィオラノを周回 驚異的な旋回スピードに圧倒 英国編集部が魅力を再確認
F512 Mより3.5秒も速くフィオラノを周回
約20年間、ミドシップ・スーパーカーへ傾倒していた、20世紀末のフェラーリ。だが残り5年で21世紀がやって来るというタイミングで、フロントエンジンの550 マラネロを発表し、自動車ジャーナリストやブランド・ファンへ衝撃を与えた。
長いフロントノーズに収まったのは、5.5LのV型12気筒。実用的なパッケージングを叶えつつ、高速域での安定性を高める空力特性も獲得していた。空気抵抗を示すCd値は、0.33に抑えられていた。
スタイリングを手掛けたのは、ピニンファリーナ社。4シーターの456 GTから影響を受けつつ、サメをイメージさせるフロントまわりや、250 GTOにも似たフロントサイドのエアアウトレット、デイトナを想起させるツイン・テールライトなどが特徴だった。
フロントエンジン・レイアウトに回来しつつ、300km/h以上での走行を許容するため、多大な努力が投じられたことは間違いない。ミドシップより、整備性も優れていた。
電子制御のアダプティブ・サスペンションは、ステアリングやスピード、ブレーキ、加速度の情報をもとに自動制御。トラクション・コントロールと相乗させることで、ミドシップ・レイアウトが強みとする鋭い操縦性を凌駕すると、フェラーリは主張した。
実際に同社のテストコース、フィオラノを攻めた550 マラネロは、テスタロッサの進化版、F512 Mより3.5秒も速く周回。V12エンジンの位置をシャシー中央へ寄せることで、50:50の理想的な重量配分を叶え、秀でた能力を獲得していた。
WSRは33台限定 バルケッタは460台
ダイナミックな造形のアルミニウム製ボディパネルは、アルミとスチールのサンドイッチ素材、フェラン材を介してスチール製シャシーへ溶接。フロントとリアのバンパーは、コンポジット素材で成形されている。
インテリアは全面レザー。スポーツシートや、カロッツェリア・スカリエッティ・コレクションといったオプションで、パーソナライズが可能だった。エアコンとパワーシート、ツイン・エアバッグ、パワーウインドウやパワーミラーは標準装備だ。
1998年に、550 マラネロはアメリカ・オハイオ州で最高速記録を3本も樹立。訴求力を一層高めることに繋がった。またこれを記念し、ワールド・スピード・レコード(WSR)という特別仕様をリリース。生産数は33台に限定された。
2000年後半には、ピニンファリーナ社によるオープンボディをまとった550 バルケッタが登場。フロントガラスは僅かに高さが抑えられていたが、走行中であれば雨天でも車内の快適性が保たれるよう、設計されていた。
バルケッタでは、ヘルメットもペアで装備。ソフトトップは備わるが、もっぱら停車時のみの利用が想定され、むしろ110km/h以上での走行時には適さないと主張されたほど。生産数は460台で、現在のコレクターからの注目度はクーペ以上に高い。
2004年に自動車雑誌の「エボ」は、直近10年間における最高のドライバーズカーとして550 マラネロを選出。「これほど実用性に優れ、能力に長けたスーパーカーは過去に存在しなかった」と絶賛している。