一緒の時間が「愛おしい」 ジャガーFタイプ 小さくはないロードノイズ 長期テスト(3)
公開 : 2024.04.07 09:45
歴史的な節目を迎えたジャガーのクーペ 同社最後のV8エンジンを改めて堪能 失ったものの大きさと今後への期待を、長期テストで掘り下げる
積算9726km 理想的なドライビングポジション
ジャガーFタイプ R75と一緒の時間が、最近は一層愛おしい。そう感じさせるのは、豊かなパワーや、個性豊かなV8エンジンが与える印象だけではない。クルマとの強い一体感を生む理想的なドライビングポジションが、筆者を惹き込むためだろう。
もちろん、シートは至って快適。さらに、シャシーのプロポーションに対して座る位置や、ドライバーを包み込む環境も素晴らしい。こんなモデルは、非常に少ない。
積算1万77km 既に寂しい気持ちでいっぱい
長期テストでお借りしているFタイプ R75は、返却する日が決まっている。まだしばらく先なのだが、既に寂しい気持ちでいっぱいだ。
特に悔やんでいるのが、フランスを南下するロングドライブへ駆り出せそうにないこと。当初はドーバー海峡を越えて、フランス西部のミュルーズにあるシュルンプフ自動車博物館へ立ち寄ったり、西部の小さな港町、ラ・ロシェルを訪れたいと考えていた。
Fタイプの成り立ちは、そんなグランドツアーへ適している。しかし、グレートブリテン島北部の湖水地方への2度のドライブが、1番の遠出になりそうだ。一方は単独で、他方は筆者のパートナーとの旅行だったが、どちらも大きな意味を持つ体験だった。
初期型より小さくなったロードノイズ
実はFタイプのクーペが発売されてすぐ、2015年に同じような行程で英国北部へ自動車旅行をしている。しかし、その初期型はロードノイズが大きすぎ、助手席との会話もままならなかった。耳栓をして、手振りでコミュニケーションを取ったほど。
それは、良い記憶を残さなかったといっていい。アルミニウム製のボックスセクション・シャシーが、ノイズを反響させているのだと考えた。他のメーカーのように、防音材が充分には張り巡らされていなかったのだろう。
だが、モデル末期となるFタイプ R75では、明らかに静かになっていることを確認できた。ロードノイズは依然として小さくなく、高音質なオーディオが再生する解像度まで鑑賞することは難しいとはいえ、長時間でも我慢できる範囲になっている。
1人で向かった北部のコッカーマスまでは、ポッドキャストやサッカー試合の解説を聞きながら走ったが、大きな不満は感じなかった。大切な場面を、聞き逃すことも。
それでも、筆者が個人的に所有する、アルミニウム製シャシーのアルピーヌA110より、長距離移動での聴覚的な疲労が大きいことは否定できない。そちらの方が遥かにボディサイズは小さく、価格は低いのだが。
話は逸れるが、ある程度クルマのことを理解した人と一緒に移動するより、1人で運転していた方が、クルマの弱点は気にならなくなる。2度の湖水地方へのドライブで、それも改めて確認することとなった。