高級SUVがほぼ “半額” に! 米フィスカー大幅値下げ実施 倒産回避の「緊急措置」か

公開 : 2024.03.29 06:25

新興EVメーカーのフィスカーが米国向け電動SUV「オーシャン」の大幅値下げを実施。エントリーグレードで約380万円から。資金難を脱するため在庫分の処理を急ぐ。

米国向け「オーシャン」は約380万円から 在庫処理急ぐ

米国の新興EVメーカーであるフィスカー(Fisker)は、米国で在庫となっている新車の販売価格をほぼ半額に引き下げた。資金調達と倒産回避のための緊急措置と見られる。

フィスカーは現在、不安定な財務状況を脱するべく、オーストリアのマグナ・シュタイア社に委託している電動SUV「オーシャン」の生産を停止し、在庫処理を急いでいる。

フィスカー・オーシャン
フィスカー・オーシャン

米国向けのオーシャンの在庫価格は、1万4000ドル(約225万円)値下げの2万4999ドル(約380万円)からとなっている。上位グレードのオーシャン・エクストリームは従来の6万1499ドル(約930万円)から3万7499ドル(約565万円)に値下げされた。

フィスカーは先週、約4700台の在庫があり、その価値は2億ドル以上になると発表した。

取材に対しフィスカーは、「現時点では事業運営や憶測に関するコメントは差し控える」とした。しかし、今回の値下げは、オーシャンを「より手頃で魅力的なEV」として位置づけるためのものだという。

フィスカーは「大手自動車メーカー」との交渉決裂が報じられたばかりである。この大手メーカーとは、日産自動車ではないかと言われている。

報道では、日産は独自の小型トラックを開発するために、フィスカーのプラットフォームの採用を検討していたという。北米工場で一緒に生産する予定だったようだ。

交渉が決裂したことで、フィスカーが倒産するリスクが大幅に高まった。フィスカーの経営陣は2月、「今後1年間の要件を満たすには現在の資金では不十分」であり、存続のためには追加資本または債務による資金調達が必要であるとした。

また、大手メーカーと契約を結ぶことを条件としていた既存投資家からの1億5000万ドルの資金提供を受けられない可能性もある。同社は今後、この条件を放棄するか、別の条件での資金提供を投資家に要請する。

フィスカーは以前、2023年第4四半期に4億6360万ドルの損失を出した後、新型ハッチバック「ピア」の開発を一時停止した。

創業者で社長のヘンリック・フィスカー氏は以前、こう語っている。「戦略的なOEM(製造業者)との提携が整うまでは、次のプロジェクトに対する外部支出を開始する予定はありません」

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事