狂気じみた?「280km/h以上のA3」 アウディRS3へ試乗 稀代の超高温ハッチバック

公開 : 2024.04.02 19:05

小ぶりなボディに、強力な5気筒エンジンを積んだ稀代のハッチバック、アウディRS3 動力性能は驚異的 一般道でダイナミックさを堪能できる 英国編集部が評価

小ぶりなボディに、強力な5気筒エンジン

比較的小ぶりなボディに、大きく強力なエンジン。数年前まではもう少し選択肢が残されていたが、現在の英国では、これが最後の一択になった。アウディRS3は、稀代のドライバーズカーだといえる。

ボンネットに収まるEA855型ユニットは、既に生産が終了した、アウディTT RSなどの動力源にもなってきた。多数の賞も獲得している。しかし、CO2の排出量を理由に、この世から姿を消そうとしている。

アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)

ボディに比べて、必要以上に大きなエンジン。2.5L直列5気筒という、エキゾチックな設計も好ましい。メルセデスAMG A 45も同じくらい速いが、エンジンは4気筒。トヨタGRヤリスは3気筒だ。もっともこれは、ひと回り小さく、より楽しいが。

現在の英国では、RS3はサルーンかハッチバックを選べる。最高出力は399psで、最大トルクは50.9kg-mもある。リミッターが解除されるオプションを選べば、最高速度は289km/hまで上昇する。

アウディA3の可能性を拡張したアウディ・スポーツは、小さくない努力を投じた。リアアクスルには、電子制御のトルクベクタリング・ディファレンシャルを与え、ドリフト・モード付きのドライブモードも実装された。

サスペンションも専用で、車高はS3より10mm低い。フォルクスワーゲン・グループの他のモデルには与えられない、特別なダンパーも組まれる。タイヤは従来以上にワイドで、ホイールは19インチを履く。

フロントのトレッドは、33mm拡大。ネガティブキャンバーを強め、旋回時のグリップ力も引き上げている。

概ね通常のA3と変わりないインテリア

現代モデルらしく、トランスミッションは7速デュアルクラッチ・オートマティックのみ。マニュアルは選べない。オプションで、アクティブ・エグゾーストと、アダプティブダンパーがセットのカーボンセラミック・ブレーキを追加できる。

先述のトルクベクタリング・デフは、15万ポンド(約2835万円)級の高性能モデルへ与えられるような先進技術。フォルクスワーゲン・ゴルフ Rと同じハードだが、リアへ最大100%のトルクを伝えられる、専用チューニングを得ている。

アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)

インテリアは、概ね通常のA3と変わりない。英国価格は5万8650ポンド(約1108万円)からだが、シャシーにお金が注ぎ込まれ、豪奢というわけではない。それでも、価格に見合う水準にはある。

レザーとダイナミカ生地のバケットシートは標準。試乗車の場合、ステアリングホイールの頂上にセンターマーカーが入り、カラーステッチといい感じのコーディネートで仕立てられていた。

12.3インチのタッチモニターは、A3と同じもの。実際に押せるハードボタンが、エアコンの操作パネルやドライブモード用に並んでいる。一方、荷室は100L小さい。

ハッチバックと比べて、サルーンは全長が153mm長く、全高が24mm低い。リアシート側の頭上空間が狭く、身長が180cmを超えるような大人は、窮屈に感じるだろう。ホイールベースは同じだから、前後方向のゆとりに変わりはない。

荷室容量は321L。トノカバー下の容量はハッチバックより大きく、リアシートを折りたたまずに使う場合は、実用性で勝る。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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