止まらない「空冷ターボ」の高騰! ポルシェ911 930から993まで 4世代を比較(1)
公開 : 2024.04.14 17:45
価格高騰が止まらない、空冷ターボのポルシェ911 1989年まで進化を重ねた、930型の発表から50年 空冷最後となった四輪駆動の993型 英国編集部が魅力を再確認
過給されていることを隠さない911 ターボ
極太のタイヤを包む、ワイドなフェンダー。ホエールテールと呼ばれる、巨大なリアスポイラー。エンジンリッドで誇らしげに輝く、斜体のTurboロゴ。ポルシェ911のターボほど、高く過給されていることを隠さないモデルは珍しい。
2024年は、そんなランドマーク的モデルの誕生から50年目。1974年のフランス・パリ・モーターショーでのデビュー以来、空冷フラット6のターボは、連綿と研ぎ澄まされてきた。
ドイツ・シュツットガルトのスポーツカー・メーカーが、ターボチャージャーを市販車へ採用するのは当然の流れだった。近年では、燃費を向上できるエネルギー回収装置といえるが、当時はモータースポーツ直系の高性能化装置だった。
1970年代初頭、ル・マン24時間レースを連覇したポルシェだが、新レギュレーションが成立。水平対向12気筒エンジンを積んだ917は速すぎ、出場が許されなくなった。
そこで、1974年シーズンへ向けてカレラRSR 2.1ターボを開発。販売に大きな影響を与えるグループ4や5への参戦には、400台以上の公道モデルの生産が求められた。
かくして、半世紀前のパリでお披露目されたのが、930型の911 ターボ。カレラRSR 2.1ターボと多くを共有する、3.0L水平対向6気筒にKKK社製のターボチャージャーを1基結合。6.5:1の圧縮から、263psを引き出した。
燃料供給は、ボッシュ社のK-ジェトロニック・インジェクションで、最大トルクは34.9kg-m。通常の2.7Lエンジンの911は、213ps/6300rpmと25.9kg-m/5100rpmで、動力性能の差は歴然だった。
400台のホモロゲーション仕様
パワーを受け止めるため、シャシーもアップデート。リアタイヤは15インチながら、アルミホイールは強化品の8.0Jへ拡幅され、ハブベアリングも専用品が組まれた。
サスペンションのセミトレーリングアームは、スチール製から鋳造アルミ製へ置換。高速走行時の安定性を高めるべく、特徴的なスポイラーも与えられた。そのぶん、価格は約2倍へ上昇した。
今回の4台の内、ガーズ・レッドの930が、そのターボ。ホモロゲーション仕様そのもので、初期に生産された400台の1台に当たり、希少性は極めて高い。シャシー番号は80。初代オーナーは、オーストラリア人だったという。
ドアを開きスポーツシートへ腰を下ろすと、タータンチェック柄の座面が優しくお尻を包む。車内はポルシェの定石通り。扇形に広がったメーターパネルに、5枚のメーターが並ぶ。フロアヒンジの3枚のペダルは、左側へオフセットしている。
前方には、フェンダーへ挟まるように、低いボンネットが伸びる。オプションだった調整式ステアリングコラムが備わり、理想的な位置へステアリングホイールを置ける。
911 ターボ3.0は、自然吸気のRSのように、シリアスなロードゴーイング・レーサーではない。車重は1195kgと軽く、豊満な動力性能を備えるが、快適性も維持している。
初期のホモロゲーション仕様でも、エアコンにパワーウインドウ、ハーフレザー・シートなどを得ていた。これらは、グループ4マシンの934にも受け継がれている。もっとも、それは規定の最低重量が重すぎたから。省く必要がなかったのだ。