止まらない「空冷ターボ」の高騰! ポルシェ911 930から993まで 4世代を比較(1)

公開 : 2024.04.14 17:45

自然吸気の930と異なる体験 明確なターボラグ

50年前のターボエンジンでありながら、フラット6は息を呑むほどレスポンシブ。ザラザラした音質はタービンによって削がれ、洗練されたサウンドに聞こえる。

排気量は3.0Lあり、同時期のBMW 2002 ターボより扱いやすい。だが4000rpmを超えると、タガが外れたようにパワーが増大。リアを沈めながら、圧巻の加速が始まる。タコメーターの針は、6400rpmまで吹き飛ぶように回る。

ポルシェ911 ターボ3.0(930型/1974〜1977年/海外仕様)
ポルシェ911 ターボ3.0(930型/1974〜1977年/海外仕様)

シフトレバーのストロークは長く、ゲートの感触は少し曖昧。しかし、頻繁な変速は必要ない。当時は新しかった、4速のタイプ930マニュアルが組まれている。

自然吸気の930と、運転体験の違いは大きい。ステアリングは、路面のニュアンスを細かな感触で伝達。軽めのカレラRS 2.7より、しっかりした重み付けが心地いい。

フロントノーズは、質量を感じないほど積極的に反応。僅かなアンダーステアで、限界を教えてくれる。リアは重く、加速時のトラクションに不足はない。

ところが明確なターボラグがあり、コーナリング・スタンスはアクセルペダルで調整しにくい。音声が同調していない、ミュージックビデオのような違和感がある。

じゃじゃ馬なイメージもある930型の911 ターボ3.0だが、不意にテールが蹴り始める可能性は低いだろう。不安定さを招くには、ギリギリのブレーキングと急なアクセルオフで、積極的にコーナーへ飛び込む必要がある。

早めのアクセルオンでも、再びブーストが高まるのは、コーナーの頂点を過ぎてから。サーキット以上に激しく扱わなければ、存分に走りを堪能できる。

1989年まで進化を重ねた930型911 ターボ

911を大きく飛躍させた930型ターボといえたが、その後の10年間はブランド自体が低迷。当時のトップ、エルンスト・ファーマン氏は、フロントエンジン・リアドライブの924と928で、新時代の模索を進めた。

とはいえ、911 ターボは進化を重ねた。バイパスバルブが追加され、ブーストは昇圧。アルミホイールは16インチへ拡大された。1977年には、1978年仕様として大きなアップデートを受け、その後の11年間を支えることとなった。

ブラックのポルシェ911 ターボ3.3(930型)と、レッドのポルシェ911 ターボ3.0(930型)
ブラックのポルシェ911 ターボ3.3(930型)と、レッドのポルシェ911 ターボ3.0(930型)

ロリー・ジャック氏がオーナーのブラックの1989年式は、930型のラストイヤー・モデル。「ティートレイ」と呼ばれるリアスポイラーが、1978年式以降の目印。新しいインタークーラーを冷やすため、従来から更に拡張されている。

水平対向6気筒は、排気量を2994ccから3299ccへ拡張。圧縮比は7.0:1へ高められ、最高出力272ps、最大トルク41.9kg-mへ引き上げられた。

ほかにも後期型では、G50型5速MTを獲得し、クロスドリルド・ブレーキディスクを装備。シフトフィールを改善する、クラッチディスク・ハブも採用されている。

車重は105kg増大。エンジンの搭載位置は、30mm後方へ移動した。これをカバーするため、リアタイヤの指定空気圧は34psiから43psiへ上昇している。

乗り比べた印象としては、後期型の911 ターボ3.3の方がポジティブ。ステアリングホイールの感触は、タイヤが大きくなったことで初期の繊細さが薄まり、どっしりと安心感が高い。

この続きは、ポルシェ911 ターボ 930から993まで 4世代を比較(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ベン・バリー

    Ben Barry

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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