フェラーリのカリスマ、ルカ・ディ・モンテゼーモロが成し遂げたこと 【第1回】フェラーリとの関わりは1973年にはじまる

公開 : 2024.04.13 08:05  更新 : 2024.04.13 10:25

再びフェラーリ

1991年にはエンツォ・フェラーリ亡き後、フェラーリの社長にモンテゼーモロが指名され、ジャン・トッドとともにF1チームの再建に取りかかった。1990年代、彼は少なからぬ負債を抱えていたフェラーリのロードカー事業を復活させ、着実に利益を上げる体制作りに尽力。1997年にはフェラーリのマネージメントと兼務してマセラティの再建をも成功させるなど、並々ならぬパワーを発揮した。

2000年にはF1世界ドライバーズ・チャンピオンを獲得し、あわせてコンストラクターズ・チャンピオンも獲得している。その後もフィアット、フェラーリのマネージメントに大きな実績を残したが、2014年、セルジオ・マルキオンネとの経営方針の対立から退任している。

再びフェラーリに就任したモンテゼーモロはスクーデリア・フェラーリを再構築し、シューマッハーと共に2000年から5年連続でF1のドライバーズとコンストラクター・チャンピオンを獲得した。
再びフェラーリに就任したモンテゼーモロはスクーデリア・フェラーリを再構築し、シューマッハーと共に2000年から5年連続でF1のドライバーズとコンストラクター・チャンピオンを獲得した。    Ferrari S.p.A

50年目に辿る、フェラーリに残した足跡

2001年9月11日。世界はこの日をけっして忘れることがないであろうが、筆者はこのアメリカ同時多発テロ事件の当日、フランクフルト・モーターショーの会場にいた。ニュース速報でこの悲劇を知ると、会場は騒然となった。NATOの軍事基地のあるフランクフルトも攻撃対象となるのではないか、という憶測が流れる中、各スタンドで行われるプレスカンファレンスを中止するメーカーもあり、会場は大いに混乱していた。

そんな中でスポットライトを浴び、登場したのがモンテゼーモロであった。評価ドライバーを務めたミハエル・シューマッハーとともにマセラティ・スパイダーのアンベールが行われたのだ。その当時、マセラティはフェラーリ・マセラティ・グループの傘下にあり、両社は一体であった。

2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ事件の当日、フランクフルト・モーターショーの会場で、傘下のマセラティ期待のニューモデルであるスパイダーのアンベールがミハエル・シューマッハーとともに行われた。
2001年9月11日。アメリカ同時多発テロ事件の当日、フランクフルト・モーターショーの会場で、傘下のマセラティ期待のニューモデルであるスパイダーのアンベールがミハエル・シューマッハーとともに行われた。    越湖信一

イタリア訛りの英語で、熱く北米へのマセラティ再上陸のプランを語る彼のスピーチは、ざわついていた会場の流れを変えたと、その時筆者は感じた。その瞬間も、彼はまさにカリスマであった。

さて、当のモンテゼーモロも昨年エンツォ・フェラーリからスクーデリア・フェラーリのマネージャーに任命されて50年という節目の年を迎えている。前述のフィオラーノにおけるサプライズのように、彼のフェラーリへの関与を願う声も少なからぬ存在するというところに彼のカリスマぶりがある。

そこで当連載では10回に渡って彼がフェラーリ、そしてフィアット(現ステランティス)に残した足跡を辿って行きたい。

続きは、「【第2回】モンテゼーモロ以前のフェラーリ エンツォはロードカーにもこだわっていた事実」にて。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    越湖信一

    Shinichi Ekko

    イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。
  • 編集

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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