「スピード抑制」から生まれた高速ポルシェ カレラRSR 2.1ターボ 935/78 GT1 911を3台乗り比べ(1)

公開 : 2024.04.20 17:45

記念すべき911 カレラRSR 2.1ターボの登場から50年 レース常勝といえたフラット6ターボ フランス伝統のル・マンで活躍 英編集部が代表的レーサー3台を乗り比べ

記念すべき50年前の911 カレラRSR 2.1ターボ

モータースポーツは、クルマを速くする。レースに勝てば、ディーラーで売れる。20世紀に確立された、クルマ好きには聞き飽きた表現かもしれない。だとしても、最もこれを体現してきたメーカーの1つが、ポルシェだ。

サーキットでの活躍とワインディングでの速さが、これほど密接に結びつき進化してきたブランドは、他に例がないといっていい。ターボチャージャーで過給されるリアエンジンの911は、その象徴だろう。

右から、ポルシェ911 カレラRSR 2.1ターボと、ポルシェ911 GT1、ポルシェ911 935/78
右から、ポルシェ911 カレラRSR 2.1ターボと、ポルシェ911 GT1、ポルシェ911 935/78

先日のコンテンツでもご紹介したが、2024年はポルシェ911 ターボの発売から50年目。これを記念しポルシェ・ミュージアムは、特に重要なレーシングカーを英国のグッドウッド・サーキットへ運んでくれた。3台も。しかも、キーまで貸していただいた。

集合したマシンの最高出力は、合計で1900馬力以上にも達する。ポルシェ・ファンの1人として、筆者には夢のような時間になった。少し冷静になるため、半世紀に及ぶ歴史が生み出されるきっかけを、1度振り返っておこう。

ターボを積んだ911として、初のレーシングカーとなったのは、カレラRSR 2.1ターボだ。皮肉なことに、耐久レースでのスピード抑制を目的に実施されたレギュレーション変更が、高性能なポルシェ誕生に繋がった。

水平対向12気筒エンジンを積んだプロトタイプレーサーの917で戦い、1971年のル・マン24時間レースで2度目の総合優勝を勝ち取ったポルシェ。シケインのないミュルザンヌ・ストレートを、385km/h以上で疾走したのだった。

速すぎて出禁になったポルシェ917

ところが主催する国際スポーツ委員会(CSI)は、この速さを問題視。そこで1972年は、エンジンの排気量を3.0L以下へ制限することが決まった。これは、917が参戦できない条件だった。

ポルシェは活躍の場を北米へ移し、カンナム・レース仕様に917をアップデート。1973年の917/30では、5.4L水平対向12気筒エンジンにターボを追加することで、最高出力を1151psへ引き上げた。

ポルシェ911 カレラRSR 2.1ターボ(1974年)
ポルシェ911 カレラRSR 2.1ターボ(1974年)

実に、4.5Lの自然吸気だった1969年仕様の、ほぼ2倍の馬力だった。強さは圧倒的で、カンナム・シリーズを席巻。アメリカ勢は太刀打ちできず、V8エンジン・マシンを養護するため、ここでも917の出場禁止が決まってしまう。

速すぎた結果といえたが、シュツットガルトの技術者はターボの価値を確信。ロードモデルにも応用できると考えた。

1974年のパリ・モーターショーで発表された試作車が、2.7L水平対向6気筒エンジンにターボを組んだ、ナローボディのポルシェ911。同じ会場には、モータースポーツでの競争力を主張するべく、911 カレラRSR 2.1ターボも並んでいた。

グループ5カテゴリーに準拠したカレラRSR 2.1ターボを、ライバルとして迎えたのはマトラやガルフ・ミラージュなどが開発したプロトタイプレーサー。それでも同社のマネージャー、エルンスト・ファーマン氏は、戦いを恐れなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニール・ウィン

    Neil Winn

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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