ベントレー最後の「W12」を堪能 フライングスパー・スピードでザ・マッカランへ(1) 僅か120台限定

公開 : 2024.04.13 09:45

120台限定の「エディション12」 ザ・マッカランとのコラボで誕生したシングルモルトの「ホライズン」 ベントレーの成功を導いたW12エンジンを英国編集部が乗り納め

ザ・マッカランとのコラボ「ホライズン」

「まずは、ご感想は?」 前例のないベントレーを生み出したカースティン・キャンベル氏へ、最新作に対する印象をうかがう。

筆者はここまで、フライングスパー・スピード・エディション12を数時間運転してきた。グレートブリテン島中西部のクルー工場を旅立つ、W型12気筒エンジンを搭載したベントレー最後の限定モデルだが、その印象ではない。

ベントレー・フライングスパー・スピード・エディション12(英国仕様)
ベントレー・フライングスパー・スピード・エディション12(英国仕様)

ご存じの方もいらっしゃるかと思うが、ベントレーはスコットランドの名門ウイスキー・ブランド、ザ・マッカランとコラボレーションし、特別なシングルモルト・ウイスキーを発売した。彼女は、その繊細な味を仕上げたマスターメーカーなのだ。

最新のベントレー、「ホライズン」が誕生したのは、スコットランドのスペイ川へ面した蒸溜所。ベントレーのイメージに相応しい味わいへ至るまでに、4年という歳月を費やしたそうだ。

この「ホライズン」は、歴史あるザ・マッカランが提供してきたウイスキーの中でも、最長の開発期間を経たとか。あいにく日本での正規販売はないようだが、提供数は限られる。そのお値段は、ベントレーの名にふさわしく、1本4万ポンド(約756万円)だ。

発売されたタイミングは、ベントレーのW12エンジンの終焉と重なった。この特別なユニットも、20年以上という熟成期間を経て、現在最高の味わいにある。しかし、強化される排出ガス規制と避けがたい電動化の波に押され、現役を退くことになった。

ベントレーの成功を導いた牽引役

既に受注生産という形では、W12エンジンのベントレーはオーダーできない。だが、最後の限定仕様のためのロットは確保されている。生産終了の期日が発表されたわけではないが、数か月先というほど、遠い話ではないらしい。

21世紀初頭に、フォルクスワーゲン・グループの傘下に組み入れられ、ベントレーが再出発を果たした時に搭載が始まったのが、W型12気筒だった。現在のベントレーの成功を導いた、牽引役だといっていい。

ザ・マッカラン蒸留所のカースティン・キャンベル氏(右)と、筆者のマーク・ティショー(左)
ザ・マッカラン蒸留所のカースティン・キャンベル氏(右)と、筆者のマーク・ティショー(左)

他に例のない高性能ユニットで、最高出力より最大トルクを重視した設計にあった。12気筒でありながら体積は小さく、全長は同じ排気量のV型12気筒エンジンと比較し、25%ほど短い。極めて洗練された質感で、秀でた能力を発揮し続けてきた。

AUTOCARだから、シングルモルト・ウイスキーよりサルーンの方へ注目しよう。今回お借りしたフライングスパー・スピード・エディション12と、筆者は1日で約640kmをともにした。

最高出力は635ps。最大トルクは91.6kg-mもある。ストレスフリーで芳醇なトルクに身を委ね、心の底から満ち足りた気持ちになった。

生産数は、120台限り。特別仕様として専用のコーディネートが与えられ、W12エンジンのスケールモデルが付いてくる。恐らく、ホライズンのボトルと一緒に、ショーケースへ飾られるのだろう。

ちなみに、スピード・エディション12はフライングスパーだけでなく、SUVのベンテイガでも指定できる。2ドアクーペとカブリオレの、コンチネンタルでも。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フライングスパー・スピードでザ・マッカランへの前後関係

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