フォルクスワーゲンe-Up!

公開 : 2014.12.09 22:40  更新 : 2021.10.11 09:11

■どんな感じ?

それが特別なモデルであることを第一印象から強く主張する、BMWの「i3」とは異なり、e-Up!はごく自然に、ストリートの中へと溶け込んでみせる。それはVWのコンセプトによるものだ。つまりEVだからといって、それに特別な個性を持たせることはないというのが、彼らの持論なのである。フォルクスワーゲンからはe-Up!に続き、e-ゴルフが日本市場にも導入される計画だが、こちらもエクステリアやインテリアの基本的なデザインや機能性は、ほかのゴルフ各車と変わらない。あるいは数年後には、気づかぬうちにEVモデルは、Up!やゴルフの中で相当なシェアを占めているのかもしれない。

82psの最高出力が発揮されるノーマル・モードでの走りは、時にスポーティーな印象さえ抱かせてくれる、非常に魅力的なものだった。スタート時の加速感はガソリン仕様とほぼ同等。1速ミッションを採用しているため、当然のことながらその加速はシームレスで、それが走行時の快適性を演出する。ロードノイズやボディーノイズの処理も実にうまい。

エコ・モードでは、航続距離を伸ばすために最高出力は若干抑えられるというが、今回試乗した市街地中心のルートでは、それに不満を感じることはなかった。エアコンもカットされるエコプラス・モードは、残りの航続距離が心配になった時のエマージェンシー用と考えるべきか。個人的にはそれを選択してまで、航続距離を稼ぎたいとは思わなかった。ちなみにエコ、エコプラスの両モードで走行中でも、アクセルペダルを一気に踏み込めば、瞬時にエレクトリックモーターは最高出力を発揮してくれるから、追い越し時、あるいはコーナリング時のストレスはほとんどない。

回生ブレーキの強度を段階的に選択可能としているのも嬉しい。最も回生が強くなるBでは、さすがに減速時のフィーリングは独特なものとなる。D1、あるいはD2を使い分けるのが、スムーズにe-Up!を走らせるための、ベストな選択といえるのではないか。

記事に関わった人々

  • 山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。

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