スポーツ走行と快適性の「夢」の両立 6年かけて開発、ポルシェ最新サスペンションの仕組みとは
公開 : 2024.04.08 06:25
開発に6年を費やしたというポルシェのアクティブ・ライド・システムの仕組みを解説。ボディを常に水平に保ち、コーナリング性能と安定感、快適な乗り心地を実現するという。
ボディが常に「水平」 安定感と乗り心地の両立
今までは、揺るぎないコーナリング性能と安定感を持つクルマが欲しければ、乗り心地の良さを諦めなければいけなかった。
サーキットでは乗り心地なんてどうでもいいのだが、どんなに熱心なドライバーでも、歯に響くような容赦ないショックを受け続ければ、萎えてしまうものだ。
高級車メーカーは過去数十年にわたり、可変ダンパー、アクティブ・アンチロールバー、エアスプリングといった技術を駆使して、ボディコントロール(安定感)と快適性(乗り心地)の妥協点とうまく戦ってきた。
最新の例の1つが、今年初めに発表されたポルシェ・アクティブ・ライド(Porsche Active Ride)システムだ。セダンの快適性とスポーツカーのハンドリングの両方を実現するという。
サスペンションの基本として、ボディを地面から離し、車輪が段差を乗り越えるためにはまずスプリングが必要だ。そしてタイヤの接地面が浮き上がるのを防ぐために、ダンパーがその挙動を抑え、路面の形状に沿った動きに制限しようとする。
アンチロールバー(スタビライザーまたはアンチスウェイバーとも呼ばれる)は、同一アクスル上の左右のサスペンションをつなぐトーションバーで、ボディに固定されている。ボディがロール(傾く)しようとすると、スプリングのレートに影響を与えずにその動きに抵抗するというものだ。
しかし実際には、左右どちらかの車輪が段差を乗り越えると、アンチロールバーは必然的に反対側に影響を及ぼす。
ポルシェのアクティブ・ライドは、エアスプリングと可変ダンパーを組み合わせたもので、アンチロールバーを使わずにボディの動きをコントロールする。
ダンパーは、伸縮に抵抗する受動的なテレスコピックチューブではなく、高圧のオイルを内部に送り込み、車輪が路面の凹凸に乗ったときのサスペンションの圧縮と反発をコントロールする。
センサーにより車輪の垂直加速度とボディの動きを測定し、各ダンパーにどれだけの力をどのタイミングで加えるかを計算する。
ポルシェによれば、可変ダンパーは非常に強力で、理論的にはエアスプリングの代替として使えるほどだという。その反応速度は1秒間に13回(13ヘルツ)と速いが、完全アクティブかつスプリングレスのサスペンションは膨大な量のエネルギーを消費してしまう。
そこで、エアスプリングを通常のツインチャンバーからシングルチャンバーに変更し、軽量化を図っている。完全なアクティブ・サスペンションではないが、システム全体としては、ハードなブレーキングや加速時にボディを水平に保ち、コーナリング時のロールをコントロールしながら、乗り心地を維持する機能も備えている。