嘘のように速いホットハッチ:MG 4 EV Xパワー 「まさにコレ!」な正当性:クプラ・ボーン お手頃EV 12台比較(6)

公開 : 2024.04.19 19:05

1位:クプラボーン まさにコレ!と感じる正当性

対してクプラ・ボーンは、4 EV Xパワーにはない、際立った洗練性を獲得している。車重1765kgに対して最高出力は230psだから、そこまで速いわけではない。しかし不満なくパワフルで、直線番長的な、一元的ではない面白さを味わえる。

4 EV Xパワーより足取りは軽快。ステアリングホイールを切れば、バランス良く回頭していく。航続距離へ気を配ることなく、確実なトラクションでスピードを展開できる。タイヤをスピンさせ、電気を無駄に使っているのでは、という疑問を抱かずに済む。

クプラ・ボーン 58kWh e-ブーストV2(英国仕様)
クプラ・ボーン 58kWh e-ブーストV2(英国仕様)

リアに積まれた駆動用モーターは、リアアクスルを動かす。後輪駆動らしく、機敏で自然。安定した挙動で、カーブを駆け抜けられる。運転を楽しめるバッテリーEVとして、期待される条件を確実に満たしている。

ボーンには、「まさにコレ!」と感じるような正当性がある。今回のように12台を並べて比較すると、改めて強みが炙り出されてくるようだ。そこには、巧妙なパッケージングも含まれている。

ルノーメガーヌ Eテック・エレクトリックやボルボEX30ジープアベンジャーと異なり、2名の大人がリアシートでくつろげる。ボディの四隅にタイヤが配置され、ホイールベースは長いものの、小回りが良く利くのも強みだ。

総合的な訴求力 3年目でも凌駕するライバル不在

兄弟モデルとなるフォルクスワーゲンID.3が7位で、ボーンが1位に輝いた理由とは。それは、より大胆に仕立てられたスタイリングと、上質な内装素材、スポーティなサスペンションとパワートレインなどによって引き出された、総合的な訴求力にある。

スタビリティ・コントロールの制御も異なり、ドライビング体験は明らかに違う。意欲的に扱えば、走りへ惹き込まれる。旋回時のバランスは素晴らしく、アクセルペダルの加減でライン調整も可能。バッテリーEVはつまらない、という主張を覆すように。

手前からクプラ・ボーン 58kWh e-ブーストV2と、ヒョンデ・コナ・エレクトリック 65kWhアルティメット、MG 4 EV Xパワー、キア・ニロ EV 65kWh 2
手前からクプラ・ボーン 58kWh e-ブーストV2と、ヒョンデコナ・エレクトリック 65kWhアルティメット、MG 4 EV Xパワー、キア・ニロ EV 65kWh 2

12台のノミネート車両の中で、実用性はトップではない。電費も、6.4km/kWhと平均的なものではある。それでも、バッテリーEVとしての完成度は間違いなく高い。

駐車場に並んでいても、存在感は充分。ドライバーの気分次第で、ダイナミックな喜びも与えてくれる。4万ポンド(約756万円)以下の選択肢で、最も特別な仕上がりにあることは間違いないだろう。

ボーンの発売は、3年前に遡る。だが、まだ凌駕するライバルは姿を表さないようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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