「頼もしい」復調のカギ アルファ・ロメオ・トナーレへ試乗 一貫性や調和が惜しいプラグインHV

公開 : 2024.04.28 19:05

車内は競合より狭め やや力不足のマイルドHV

車内空間は、競合ほど広くはない。運転席は、ステルヴィオより着座位置が高い印象。足元の空間はやや広めながら、頭上空間は前後とも限定的といえる。

ダッシュボードはシンプルで、このブランドらしく、メーター用モニターは長いカウルで覆われている。ステアリングホイールにはアルミ製シフトパドルが備わり、センターコンソールには従来的なシフトレバー。とても好ましい。

アルファ・ロメオ・トナーレ 1.3PHEV ヴェローチェ(英国仕様)
アルファ・ロメオトナーレ 1.3PHEV ヴェローチェ(英国仕様)

DNAと呼ばれるドライブモードのセレクターも、ノブのまま。エアコンの操作パネルには、実際に押せるハードボタンが並んでいる。

ただし、内装の製造水準が高いわけではない。不自然なエッジが残る成形部分も見られた。エアコンの送風口やタッチモニター周辺、メーターカウルなどは、もう少しソリッド感が欲しい。

荷室容量は、マイルド・ハイブリッドならトノカバー下で約500L。プラグインにすると、床下の空間が奪われ約400Lになる。形状はスクエアで、荷物は載せやすそうだ。

さて、アルファ・ロメオ期待のトナーレながら、走りの印象で「らしさ」が濃いわけではない。マイルド・ハイブリッドを、同社の技術者は適正サイズだと主張するが、訴求力ある運転体験にはやや力不足だろう。

低速域ではエンジンを始動せず走れるものの、距離は短い。強めの加速を求めると、大きな燃焼音が響いてくる。洗練性は低くないが、2.0LガソリンのBMW X1には及ばない。

7速デュアルクラッチATも、BMWの8速AT並みの滑らかさや変速スピードは得ていない。変速タイミングも、一層の調整を受けても良さそうだ。

満充電なら運動神経は高い 惜しい一貫性や調和

プラグイン・ハイブリッドでは動力性能に余裕が生まれ、求めただけの反応を得られる。ただし、それは駆動用バッテリーにも余裕がある場合のみ。満充電なら、0-100km/h加速を6.3秒でこなし、かなりの運動神経を発揮する。

充電が切れた状態では、0-100km/h加速は1秒ほど余計にかかる。充電のためエンジンのパワーが奪われると、深く踏み込むまで、アクセルレスポンスが悪くなる。充電量を問わない一貫性という点では、競合の方が一枚上手だ。

アルファ・ロメオ・トナーレ 1.3PHEV ヴェローチェ(英国仕様)
アルファ・ロメオ・トナーレ 1.3PHEV ヴェローチェ(英国仕様)

車内の防音性はほどほど。110km/hでの車内のノイズレベルは、71db。参考までに、クラストップの静寂性を誇る例で67dbだ。

操縦性は、アルファ・ロメオが特にアピールする部分。確かに、このクラスではダイナミックに反応する部類に入る。ボディロールは適度に抑えられ、コーナリング時にグリップ不足が露呈することも基本的にない。

ステアリングレシオは可変式ではないが、その評価は英国編集部で別れた。SUVとしては鋭く回頭するものの、やや一貫性に欠けると感じたスタッフもいた。

四輪駆動のプラグイン・ハイブリッドでは、コーナーからの脱出時などで、前後アクスルの調和がうまく取れていない印象。マイルド・ハイブリッドでも、特段機敏な回頭性を披露したり、自然な旋回性を楽しめるわけではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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