【万人受けは狙わない】 時代を裏を突いた仏の一台 DS 4エスプリ・ド・ヴォヤージュEテンス

公開 : 2024.04.12 17:45

分類上「CセグメントのクロスオーバーSUV」であるDS 4エスプリ・ド・ヴォヤージュEテンスへ試乗しました。乗ってみると少し違った印象も? 万人受けタイプでは無さそうで、加えてシトロエンC5 Xの影も浮かびます。

賑々しい見た目、尖った高級路線

CセグメントのクロスオーバーSUVというと、こんもりとしたボディを想像していたのだが、DS 4は違った。全周にわたって水平のプレスラインがビシッと入りボディの低さを強調しているのだ。

クロスオーバーの枠に辛うじて踏みとどまっている感じ。雰囲気的にはレクサスにも似ている(?)。どちらもハイブランドを標榜し誕生したメイクスなので、共通項があるのかもしれない。

DS 4エスプリ・ド・ヴォヤージュEテンス
DS 4エスプリ・ド・ヴォヤージュEテンス

ドアを開けるとサイドシルにEsprit de Voyageの文字。今回の試乗車はエスプリ・ド・ヴォヤージュという特別仕様車だった。専用のドアミラーや放射線状のエンボス入りのダッシュボードやドアトリム/フロアマット/19インチホイール等を装備しているという。

外観に負けず劣らず、インテリアも徹底的に作り込まれている。革素材以外の全ての“面”にエンボス加工やクローム処理が施されている感じで、ファッションでいうところのパターンオンパターンのような賑々しさが感じられる。

最近は複雑になり過ぎた造形をシンプルに戻す、リダクショニズムのようなスタイルがポピュラーといえる。DSの攻め方が突出して感じられるのは、時代の裏をうまく突いているからかもしれない。

プラットフォームはおなじみのEMP2で、前輪を駆動するエンジンも“いつもの”1.6L直4ターボだが、車名の末尾のEテンスが示すようにPHEVとなっている。エンジンは180psだが、モーターも110psと必要にして充分なスペックとなっている。小さな高級車、その仕上がりはどうなのか?

個性的な操作系、簡単には仲良くなれない?

DS 4 Eテンスが搭載している走行用バッテリーの容量は12.4kW。一充電走行距離は56kmとなっているので、普段使いをEVとして完結できるはずである。

ところが今回は撮影場所までの道程で電気を使い果たしてしまったらしい。そこでスポーツモードを選び積極的に回生を促したのだがほとんど充電できなかったので諦めることにした。

DS 4エスプリ・ド・ヴォヤージュEテンス
DS 4エスプリ・ド・ヴォヤージュEテンス

このためエレクトリック・モードを試すことができなかったが、それでも発進の瞬間はちゃんとモーターで静かに走りはじめていたし、加速のたびにアシストも入っていたので結果オーライだった。

しばらくドライブしていて操作系も見た目と同じく個性的であることに気がついた。エアコン関係はセンターモニター下の物理スイッチで操作するのだが、小さくてオシャレすぎて分かりづらい。シフトレバーのすぐ前にあるDSスマートタッチというタッチスクリーンも直感的に扱うことは難しく、慣れが必要だと感じた。

メーターパネルの表示も小さめで走りながら理解を深めるのは難しかった。操作系は総じて「オーナーになって慣れる必要あり」という感じだったのである。

一方ドライブフィールの部分もそれなりに個性的だった。セルフセンタリングが強いのでコーナーの立ち上がりでステアリングを握る手の力を緩めるとスルスルッと素早く舵が中立に戻っていく。そしてもちろん、乗り心地はフワッと柔らかく、こちらもすぐに “シトロエン系”とわかるものだったのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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