4年前の優等生 今の実力はいかに? プジョーe-208 GTへ試乗 ハンサムさは変わらず 競合多し

公開 : 2024.04.30 19:05

動力性能に不満なし GTの乗り心地は硬め

確認はこのくらいにして、一般道へ出てみよう。最高出力135psのe-208でも、小さなボディを不満なく加速させる。紛らわしいことに、156psの方が0-100km/h加速は0.1秒だけ遅い。

とはいえ、どちらも動力性能に不満はなし。ホットハッチとは呼べないまでも、充分以上に活発に走る。

プジョーe-208  51kWh GT(英国仕様)
プジョーe-208 51kWh GT(英国仕様)

ノーマル・モード時は、アクセルペダルを一番奥へ踏み込むまで、出力が7割ほどに制限されている。普通に運転していれば気になる制御ではないが、特に意味があるようにも思えなかった。

スポーツ・モードを選ぶと、額面通りの最高出力を簡単に引き出せるように。エコ・モードでは明らかにパワーが絞られ、電気を食うエアコンがオフになる。

回生ブレーキは、通常のDモードでは穏やか。Bモードを選ぶと、シフトダウンしてエンジンブレーキを効かせたように、強く減速する。ブレーキペダルを踏まずに済む、ワンペダル・モードはない。スルスルと進む、惰性走行もできない。

ブレーキペダルは柔らかめの踏み応えながら、よく効く。制動力の強さも調整しやすいと感じた。

乗り心地や操縦性は、2020年に試乗したe-208のアリュール・グレードでは感心するほど優れていた。姿勢制御は引き締まり、キビキビと回頭していく様子が好ましかった。

他方、2024年に試乗した50.8kWhのGTラインは、サスペンションが硬め。郊外の道のうねりなどは良くいなすものの、市街地のツギハギが多い路面などでは、少し不快な衝撃が車内へ届く。舗装の剥がれた穴を通過すると、タイヤが振動する音も聞こえた。

長距離も快適な静寂性 電費はe-308より悪い

タイヤは、幅が205あるミシュラン・プライマシー4。グリップ力は高く、粘り強くコーナーへ食らいつく。とはいえ、シャシーバランスは安全志向で、かつてのGTiのように快活な走りは楽しめない。

アクセルオフでフロントノーズをイン側へ巻き込んでいけるが、リアは落ち着いたまま。ステアリングホイールの感触も、積極的に運転したいと思わせるほど、フィードバックが濃いわけではない。上下がフラットな形状は、扱いやすいとは感じなかった。

プジョーe-208  51kWh GT(英国仕様)
プジョーe-208 51kWh GT(英国仕様)

トラクション/スタビリティ・コントロールの介入は、適正と呼べるだろう。アクセルペダルを目一杯踏んでも、ホイールスピンはしない。きついコーナーでは、僅かなトルクステアを感じる。

バッテリーEVだから、車内は静か。長距離移動も快適にこなせるはず。ただし、GTグレードを選ばない限り、腰部分のランバーサポートは調整できない。i-コクピットの運転姿勢に慣れない人は、むしろ疲れてしまうかも。

電費は、50.8kWhで平均5.6km/kWhだった。現実的な航続距離は、285km程度と考えていいだろう。この電費は、ひと回り大きいe-308より悪い。バッテリーEVでは、車重以上に空力特性が重要だという事実を示している。
 
英国価格は、エントリーグレードのアクティブで3万1600ポンド(約607万円)から。内燃エンジンの208より、約1万ポンド(約192万円)高い。GTグレードで50.8kWhの駆動用バッテリーを選ぶと、3万6250ポンド(約696万円) へ上昇する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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