ボルボの雪上テスト現場へ潜入! EX30でエルク避けを体験 ソフト開発での重要性も増す
公開 : 2024.04.26 19:05
シャシーやソフトウェア開発で重要な役目を果たす、極寒地での試験 トラクション・コントロールを検証するエルクテストを体験 英国編集部がボルボの開発現場へ潜入
氷点下40度から灼熱の60度まで
アイスバーンの運転に長けたニクラス・リンドベリ氏が、最新のボルボEX30で華麗にカーブを抜けていく。腕に自信があるドライバーが見ても、きっと感心するほどのスキルだろう。
筆者は遥々、スウェーデン北部のルーレオーという町へやってきた。ストックホルムから北へ約900km。少し北上すれば、北極圏という土地だ。ここは、1960年からボルボが車両開発のテストを行ってきた場所だという。
お邪魔したタイミングでは、EX30と、XC40の後継モデルになるEX40の評価が進められていた。この2台に限らず、初期の試作段階から量産仕様に至るまで、様々なフェイズでテストが繰り返されている。走行距離もかなりのものだろう。
スウェーデン北部だけでなく、氷点下40度から灼熱の60度に至るまで、実施環境は様々。車載システムや装備品などのすべてが、特殊な条件でも機能するか入念に検証される。経験豊かな技術者とドライバーによって。
現在、同社で安全技術の上級マネージャーを務めているのが、ミカエル・リュング・オースト氏。認知科学に関する知識を有し、ドライバーが取る行動を専門的に研究している。事故の要因をあぶり出し、減らすことが目的だ。
彼が説明する。「冬季テストはかなり単純。過酷な環境で、クルマの動作状態を確かめます。極端な環境でクルマがどう動くのか、ドライバーとどのようなやり取りが生じるのか、確認していきます」
重要性が高まるソフトウェアの実地テスト
「安全性という視点だけでも、答えを求めるべき疑問は沢山あります。雨が降っていて、路面が凍結していた時は? 極寒の中で電子システムはどう動くのか? 外部センサーは正常か? 駆動用バッテリーは氷点下でどうなるのか?」
「試験室のような閉ざされた環境で、極端な条件を再現することもできます。でも、自然はタダですからね! 自律運転システムのソフトウェアを確かめるため、技術者をアメリカへ派遣することもあります」
「これはボルボだけではありませんでしたが、衝突被害軽減ブレーキが動作してしまう特定の橋がありました。原因は、センサーが橋の構造部をトラックの後ろだと誤認していることだったんです。実世界のデータから、学び取れるんですよ」
雪上や氷上での走行テストでは、ノイズや振動の状況、エアコンの動作などを確かめられる。素材がどのように変化・劣化していくのかも確認できる。だが近年のモデルでは、最も重視される領域がソフトウエアだ。
走行時の安定性を保つスタビリティ・コントロールは、1990年代から量産車へ実装が始まった。2014年以降は、英国で売られる車両には義務付けられている。トラクション・コントロールと連動し、必要なタイヤへブレーキをかけ、スピンなどを回避できる。
このシステムの検証方法は複数あるが、ボルボが以前から実施しているのが、エルク(ヘラジカ)テストと呼ばれるもの。走行中に大きな動物が突然飛び出してきた状況を想定した、緊急回避テストだ。多くのドライバーが、実際に操作する可能性も高い。