「実燃費と違いすぎ」で規制強化も? 欧州燃費テストの “欠点” 浮き彫りに WLTP改正の可能性
公開 : 2024.04.15 18:05
欧州で実施される燃費・排ガス試験「WLTP」が現実世界からかけ離れているという指摘が上がった。EV以外のすべてのエンジン車に対して、試験内容が厳しくなる可能性もある。
欧州WLTP 「現実」との乖離
自動車業界は “実燃費” に関する危機に直面している。欧州の燃費・排ガス試験法「WLTP」の欠点が浮き彫りになったのだ。
ここ数週間の間に欧州連合(EU)から2つの報告書が発表され、いずれも早ければ2026年以降に販売される新車に大きな影響を及ぼす可能性がある。
何が起こったのか?
欧州会計検査院と欧州委員会の発表によると、実際の走行環境で得られたデータから、ガソリン車、ディーゼル車、プラグインハイブリッド車(PHEV)の燃費およびCO2排出量が、実験室で算出されたWLTP数値から大きく乖離していることがわかったという。
2022年に登録された新車を対象とする試算では、WLTPの数値はガソリン車の燃費を23.7%、ディーゼル車の燃費を18.1%過大評価している。
比較的大型のバッテリーを積むPHEVの平均CO2排出量は139.5g/kmで、内燃エンジン車の平均より約23%優れているが、実走行モニタリングではバッテリーの充電頻度(コンセントからの充電)がWLTPテストで見積もられたほど高くはなかった。つまり、想定よりもエンジンの使用頻度が高いということだ。
結果として、多くの内燃エンジン車が欧州当局による再検査に直面することになる。特に、車両重量の重い大型SUVや高級車、大排気量車、PHEVにはこれまで以上に厳しい視線が向けられる。
欧州会計検査院はまた、EUを離脱した英国に対しても勧告を行い、自動車メーカーに企業平均CO2排出量目標(現在115.1g/km、来年から93.6g/kmに低下)を義務付ける現行法を廃止し、代わりに「ゼロ・エミッション車の最低シェアに基づく目標」を採用するよう求めている。
英国市場はEUの企業平均排出量規制の直接的な影響を受けていないが、国内で生産された自動車の53%はEU市場に輸出されているため、引き続き監視対象となる。
何が問題だったのか?
2015年に明らかになった排ガス不正問題「ディーゼルゲート」の後、EUは1992年制定の燃費試験「NEDC」を廃止し、新しい試験形式の導入に動いた。
そして、2017年にWLTP(Worldwide Harmonised Light Vehicles Test Procedure)が導入された。WLTPのテストは、NEDCよりも長い時間(20分から30分へ延長)、長い距離(6マイルから14マイル)で実施され、停車、平均速度、加速などもより現実に近い条件とされた。
WLTPが想定する走行条件は「実際の走行プロファイルの世界的な統計調査に基づいている」と保証されていた。しかし今回、EUが2021年以降の新車に “静かに” 導入した車載装置によって、実燃費を大幅に過大評価していることが証明されたのだ。
2021年当時はあまり話題にならなかったが、EU加盟国で販売される自動車に車載燃料消費計測装置(OBFCM)の取り付けが義務化された。2021年以降に登録される乗用車と、2022年以降の商用車が対象となっている。
欧州委員会はこのOBFCMについて、「装置から読み出されたデータを用いて、走行中の車両の “実世界” のCO2排出量を監視し、公式のWLTPデータと比較する」としている。
この実環境モニタリングの最初の結果が、EUのCO2排出量目標に疑問を投げかけた。