何度でもやり直す! BMWイセッタに30年 メッサーシュミットには11年 完璧主義なバブルカー・マニア(1)
公開 : 2024.04.28 17:45
30年も手が加えられ続けてきたイセッタ
ブルーに塗られたイセッタ 300を、ワトソンは手を加えながら楽しんできた。これまでの30年間、希少部品が見つかる度に交換し、新しい技術を習得する毎に不完全な部分を直してきた。再塗装も数回している。
「サンルーフの素材が何なのか、時間をかけて調べたことがあります。表面に、木目の模様が入っているんです。英国のイセッタ・オーナーズクラブが復刻したサンルーフは滑らかで、完全には正しくありませんでした」
「ドイツ在住のマニアへ連絡を取ると、本来の素材はあと5mしか残っていませんでした。成形後のサンルーフは3点のみ。すべて購入し、2点はオーナーズクラブのメンバーへ譲っています」
しかし、インターネットの普及で近年は情報共有が進んでいる。英国のオーナーズクラブは、北米や南米、ドイツのクラブと協力しながら部品を捜索。正確に再生産することが可能になったという。
ワンピースのステンレス製バルブも、新たに開発された。BMWのエンジンは基本的に堅牢だが、バルブがアキレス腱だった。2万kmから3万kmほどで劣化し破損。シリンダー内に落ち、コンロッドがクランクケースを突き破るトラブルが珍しくなかった。
ワトソンは、イセッタのレストアだけでは飽き足らず、1958年式ベスパもレストア。ガソリンポンプの再生でも技術を磨き、新しいレストア対象を探すことにした。仕事にやりがいを感じる、機械である必要があった。
11年を費やしたメッサーシュミットのレストア
限られたガレージへ収めるには、マイクロカーである必要もあった。そして以前から、メッサーシュミットに興味を抱いていた。2006年に行動へ移した彼は、オーナーズクラブの会報を入手。ワンオーナーの1962年式KR200が、販売されているのを発見した。
その日のうちに、ロンドンへ向かったらしい。「メッサーシュミットは、自分のターニングポイントでした。大破した状態だったんですよ」
復元を決意したワトソンは、金属を加工する旋盤とフライス盤を購入。これまでの経験を活かしながら、ライフワークといえる仕事に着手した。「この状態までに11年かかりました。途中、嫌気が差して放置していた期間もありますが。1年半くらい」
始めに着手したのは、錆びていたボディシェル。パネルの大部分は新たに作り直された。アクリル製のドームは、正しい形へ成形するため2回試作したらしい。
完成したKR200は、2017年に開かれたクラシックカー・イベントへ出展。見事にRACトロフィーを受賞している。
自身の技術を更に高めたワトソンは、再びイセッタへ。2016年のグッドウッド・リバイバルで、BMWブースへ招待を受けるほどの状態にあったのにも関わらず、ボディとシャシーは分離された。
「数年前のナショナル・マイクロカー・ラリーで、誰かがシャシーの色が間違っていると発言したのを耳にしていました。自分でも、オリジナルとは違う部分を別に見つけていたんです。ボディを降ろし、改めて作業するしかないでしょう!」
この続きは、完璧主義なバブルカー・マニア(2)にて。