「異端児」の有終の美 TVR T 400R トップギアの映像で内装を再現 ナンバー付きGT1ル・マン・マシン(2)
公開 : 2024.05.04 17:46 更新 : 2024.05.07 06:43
340km/h以上が疑問なほど親しみやすい
筆者がAUTOCARへ加わり、初めて乗ったTVRは、ピーター・ウィーラー氏時代のタスカンだった。ドアミラーの下に隠れたボタンを押して、ドアを開いた瞬間の印象は今でも忘れない。
インテリアのデザインは、息を呑むほど前衛的。レバー式のハンドブレーキと、3スポークのステアリングホイールが、不自然なほど普通に見える。ダッシュボードやセンターコンソールはレザーで包まれ、20年以上前の少量生産車として考えれば高品質だ。
メーターパネルには、デジタル・ディスプレイが組み込まれている。スクロールすることで、回転数やスピードなどの表示を切り替えられる。シートは小柄だが、クッションは肉厚。シフトアップ・ライトも備わる。
ダッシュボード上部にはオーディオデッキが収まり、センターコンソールの先にパワーウインドウのボタンがある。それ以外の殆どの車載機能は、チルトするステアリングホイールの奥へ並んでいる。アルミ製のペダルが、フロアヒンジで固定されている。
キーをひねると、あっけなく轟音が充満する。音圧に圧倒されそうだが、4.4L直列6気筒は扱いやすい。荒々しさはないといっていい。
クラッチペダルはかなり軽く、シフトレバーは機械的な手応えが気持ちいい。市街地の速度域でも、感心するほど運転しやすい。本当に340km/h以上出るのか、疑問に感じるほど親しみやすい。
異端児的TVRの有終の美を飾ったT 400R
1速のレシオはかなりロング。2速以降はしっかりクロスしている。動力性能の核心へ迫るには、充分な回転数まで引っ張る必要がある。粘り強く回り、中回転域からたくましく速度を上昇させていく。
ストロークの長いアクセルペダルを踏み込むと、豪快なストレート6サウンドが放たれる。大排気量ユニットならではの、ドライで生々しい響きが、カーボンファイバー製ボディに共鳴する。
このT 400Rは、ル・マン24時間レースを前提としたGT1マシンのコピー。通常のタスカンと比較して、あえてステアリングの反応は若干鈍く調整されている。ミュルザンヌ・ストレートを300km/h以上で疾走する場面なら、歓迎されるはず。
グレートブリテン島の傷んだ路面で海岸を目指すと、ボールジョイントのサスペンションは、時々痛烈な衝撃を届ける。車内には、痛々しいノイズが反響する。
タイヤはトーヨー・プロクセス。通常のドライバーなら戸惑うほどグリップ力が高い。見通しの良いストレートでは、甚大なトラクションを確かめられる。
ナンバープレートを付けたル・マン・レーサーといえる、市販されなかったT 400Rと、2台限りのT 440R。理解するほど、魅了される。ウィーラー時代の異端児的TVRとして、有終の美を飾ることになったが、これ以上の偉業は作りようがなかっただろう。
協力:TVR101社、スティーブン・ウッドロウ氏
TVR T 440R(2002〜2003年/英国仕様)のスペック
英国価格:7万4995ポンド(新車時)/24万ポンド(約4608万円/現在)以下
生産数:4台(プロトタイプ含む)
全長:4404mm
全幅:1850mm
全高:1200mm
最高速度:346km/h
0-80km/h加速:3.8秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1050kg
パワートレイン:直列6気筒4397cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:420ps/6000rpm
最大トルク:53.1kg-m/6000rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)
画像 ナンバー付きGT1ル・マン・マシン T 400R ミレニアム前後のTVRたち 3代目グリフィス・プロトも 全126枚