最新 i7の防弾仕様「プロテクション」へ試乗 動きが鈍重では無意味 BMWの特別プログラムを体験(2)

公開 : 2024.04.27 09:46

衝突テストのNCAPとは異なる安全性を誇る、BMWのプロテクション・モデル 装甲車の基準でドイツ最高レベル マシンガンの攻撃を凌ぐ最新7シリーズを英国編集部が体験

装甲性能が高くても動きが鈍重では無意味

装甲性能を高めても、動きが鈍重では攻撃から逃げられない。動的能力の高さも、プロテクション・モデルでBMWが開発時の目標としたことの1つだ。「充分な敏捷性がなければ、保護しても意味はありません」

「これは密接に関係しています。攻撃を受けている場合、最も重要なことは危険からできるだけ早く脱出すること。安全に。1秒の違いが大切になります」。BMWのプロテクション・モデル開発を率いる、アクセル・スタナー氏が説明する。

BMWのプロテクション・モデル群
BMWのプロテクション・モデル群

今回筆者が訪れたのは、旧東ドイツのテンプリンという街にある、旧ソ連軍の飛行場。訓練を受けたドライバー・チームの指導を受けながら、BMW最新の装甲車両、i7 xドライブ60 プロテクションへ試乗させていただく。

始めは、徐行スピードでの簡単な方向転換。続いてバックでの走行。日が暮れても体験は続き、ヘッドライトを灯さず130km/hで走行し、障害物を避けるように車線を変更するという運転で、1日は終わった。

この内容は、BMWのプロテクション・モデルを運転するドライバーが、起こりうる事態へ対応できる技術を身につけるための、訓練プログラムと同等だという。つまり、ただ指定されたルートを走るだけではない。

ある時点で、奇襲攻撃を受ける。もちろんシミュレーションだが、7シリーズの直ぐ側で火炎瓶が爆発するタイミングがある。筆者が運転するi7 プロテクションも、激しい炎をかすめるように走ることとなった。

車内は不気味なほど静か 想像以上に機敏

ぱっと見は通常のi7と似ているが、車高は高い。ドアは間違いなく重く、開閉する動作は、銀行に据えられた金庫の扉のよう。通常の7シリーズではないことがわかる。

反面、車内空間は通常のi7 xドライブ60とほぼ同じ。豪華に仕立てられたインテリアの中で、ゆったりくつろげる。

BMW i7 xドライブ60 プロテクション(欧州仕様)
BMW i7 xドライブ60 プロテクション(欧州仕様)

ツインモーターが生み出す強力なトルクで、i7 プロテクションの加速は鋭い。フルパワーを与えると、フロントノーズが大きく持ち上がる。市街地の速度域を超えると、装甲装備で車重が1.7t以上も増えたことを実感する。

高速域での速度上昇は、素早いというより堂々。駆動用バッテリーに蓄えられた電気を、沢山消費していく。

とはいえ、i7 プロテクションの印象が最も良いのは高速道路だろう。キャビンは不気味なほど静か。BMWがプロテクティブ・コアと呼ぶ装甲構造と多層ガラスが、風切り音やロードノイズの殆どを遮断するためだ。

軽くない車重は、常に感じ取れる。特にコーナリングで。躍動的にボディを旋回させるには、両腕でステアリングホイールを意図的に回す必要がある。操縦性には、大幅に増加した質量が生む物理的な特性が作用する。

ブレーキもアップグレードされている。加速時と同様に、減速時にはフロントノーズが沈み込む。

少なくとも、ステアリングの反応は正確。アクティブ後輪操舵システムも実装され、想像以上に機敏に走る。ボディは大きいが、狭い道での取り回しも難しくないだろう。プログラムには、障害物を連続して避ける内容が含まれていたから、間違いない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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