最新 i7の防弾仕様「プロテクション」へ試乗 動きが鈍重では無意味 BMWの特別プログラムを体験(2)

公開 : 2024.04.27 09:46

購入時は事前に厳正な審査を受ける

タイヤは、ミシュラン・プライマシーPAXというランフラットで、サイズは255-740 R510。これも通常のアイテムと異なり、攻撃を受けてもある程度の機動性を確保できるよう、ホイールの内側に特別な構造体が埋め込まれているらしい。

向かうところ敵なしといえる、BMWの電動リムジンは、ドイツのディンゴルフィング工場で生産される。通常の7シリーズと一緒に。しかし、装甲装備に関しては多くが手作業だという。

BMW i7 xドライブ60 プロテクション(欧州仕様)
BMW i7 xドライブ60 プロテクション(欧州仕様)

世界中の政府や企業が、特別な要人を守るため、BMWのプロテクション・モデルを利用している。購入に際しては、最終的な契約が結ばれる前に、同社による厳正な審査を受けるそうだ。

「私たちは、誰にでも販売するわけではありません。弊社のプロテクション事業は、商業的な側面もある一方で、テロリストの手へ渡らないよう管理してもいるんです」。スタナーが厳しい表情で話す。

サルーンだけでなく、SUVの5Xにもプロテクション仕様がある。防弾性能では、i7がドイツ基準のVPAMで最高評価、VR10なのに対し、VR6へ落ちる。その代わり、オフロード性能は高い。実際、険しい路面を走破してみせた。

この場合、多くが期間限定のリースとのこと。満了後は、BMWへ返却される。

新しい量産車の多くが、衝突安全基準のNCAPで、安全性の高さを主張する。しかし、i7のプロテクションは桁違い。世界で最も恐れられているマシンガンの銃口が向けられても、動揺せずに運転し続けられることだろう。

番外編:プロテクションのスペックは秘密

BMWの通常の量産車と異なり、プロテクション・モデルのスペックは秘密が守られている。「特定の要素は、外部へ知られないことが重要です。テロリストの有利になることはしたくありませんから」。とスタナー。

ただし、いくつかの数字は明らかになっている。今回試乗したi7 xドライブ60 プロテクションの車重は、4375kgある。昨年AUTOCARで試乗した通常のi7は、2758kgだ。

BMW X5のプロテクション仕様
BMW X5のプロテクション仕様

これにより、0-100km/h加速は4.7秒から8.1秒へ遅くなる。最高速度は159km/hへ制限される。内燃エンジンで走る760i xドライブ・プロテクションの車重は、少し軽く3890kg。0-100km/h加速は6.8秒で、最高速度は210km/hと高い。

重装甲化は、電費や燃費へ与える影響も小さくない。i7 プロテクションは3.3km/kWhで、760i プロテクションでは6.8km/Lに留まる。それでも、充分な距離は逃げられるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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