「旧友」へ再会したような アウディQ3 スポーツバックへ試乗 安全・安心な足取り 2025年に3代目へ交代

公開 : 2024.05.01 19:05

静かで安楽なプラグインHV 気張らずに速い

それでは、公道へ出てみよう。まず、Q3の45 TFSI eは静かで安楽。駆動用モーターと内燃エンジンの協調性が高く、滑らかにフロントアクスルを駆動し、2つのパワートレインが譲歩し合うような様子はない。

4気筒エンジンは滑らかに始動し、そっと止まる。高負荷時にノイズが高まることもない。駆動用バッテリーの充電が切れても、動力性能に目立った低下はなく、燃費も優秀といえる。

アウディQ3 スポーツバック 45 TFSI e Sライン(英国仕様)
アウディQ3 スポーツバック 45 TFSI e Sライン(英国仕様)

満充電で濡れた路面と、充電が切れた状態で乾いた路面、それぞれ0-100km/h加速を試してみたが、実際、後者の方が速く7.4秒を記録した。カタログ値は7.3秒だ。ただし、フル充電の方が普通に運転していて速く感じることも事実だ。

エンジンとモーターの両方がフルパワーを引き出すと、フロントタイヤはトラクション不足に陥る。電子制御が滑らかに介入し、なだめてくれる。

ブレーキペダルの感触は、同クラスのプラグイン・ハイブリッドの中では好印象。ソリッドで漸進的に効く。回生ブレーキも有能で、可能な限り運動エネルギーを電気に変換してくれるようだ。

操縦性は上質で落ち着いていて、アウディらしい着実な足取りが強み。ステアリングは正確に反応し、姿勢制御は引き締まり、グリップ力は充分以上。敏捷性が高く、重ったるい印象はなく、バランスの良さが光る。

だが、ドライバーとの一体感が高いわけではない。高速域でステアリングホイールの重さが増すことはないものの、気張らず運転できるのも特徴だ。

安全・安心なドライビング体験 まだ訴求力高し

カーブを攻め込んでも、洗練性は霞まない。安心感や安定感は高く、このクラスのSUVでは動的能力の高い1台といっていい。乗り心地も快適で、完成度の高さがうかがえる。

試乗した45 TFSI e Sラインが履いていたのは、19インチ・ホイールにグッドイヤー・イーグルF1というタイヤ。スポーツサスが組まれていたが、冬場の不順な路面にも巧みに対応していた。四輪駆動の方が、一層安定していたと思うが。

アウディQ3 スポーツバック 45 TFSI e Sライン(英国仕様)
アウディQ3 スポーツバック 45 TFSI e Sライン(英国仕様)

駆動用バッテリーの充電だけで走れる距離は、32kmから40kmの間。2024年のプラグイン・ハイブリッドとしては短いものの、定期的に充電できる環境なら、ガソリン代を節約できるはず。

充電が切れた状態で、高速道路を110km/hで走行した時の燃費は13.8km/L。市街地などを交えた平均では、17.1km/Lとなった。

3代目の発売が来年に控えた、2代目Q3。スペック上では目立った強みがなく、フォルクスワーゲン・グループのプラグイン・ハイブリッドとして、このタイミングでの購入を後押しする要素は少なく見える。

しかし実際に運転してみると、総合力の高さが光る。運転しやすく洗練性は高く、充電が切れてもエンジンだけで不満なく走る。シートは座り心地が良く、ハーボタンが並ぶダッシュボードは操作しやすい。内装の質感も高いままだ。

アウディらしい、安全・安心なドライビング体験も強み。引退が近いことは間違いないが、電動SUVがまだ早いとお考えなら、検討する価値はまだ高い。

◯:電動パワートレインの洗練性と力強さ 幅広い選択肢 優れた乗り心地と操縦性
△:電気だけで走れる距離は短め さほど魅力的ではない価格 ライバルより狭めの車内空間

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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