シリンダー内の「旋回流」が鍵? アンモニアは化石燃料の代わりになるか 上智大学の研究チームが発表
公開 : 2024.04.19 18:05
脱炭素化に向け、アンモニアをエンジンの燃料として使う技術に注目が集まっている。上智大学は3月、課題となっていた「燃焼効率」の向上に吸気ポートの形状が大きく関わっていることを発見した。
吸気ポートの設計工夫で実現に一歩近づく?
昨年7月、中国メーカーの広州汽車(GAC)がトヨタと共同でアンモニア燃焼エンジンを動かすことに成功したと発表した。
ガソリンや軽油といった化石燃料の代替として、メタノールや水素、合成燃料を使うという話はよく耳にするが、アンモニアはどうだろうか。
アンモニアは家庭用洗浄剤や肥料として広く使われており、これでエンジンを動かすというのはやや奇抜なアイデアにも見える。しかし、船舶、トラック、自動車など、実はあらゆる輸送分野で研究が進められているのだ。
最近では、日本の上智大学もエンジンの燃焼室内でアンモニアを効率よく燃焼させる研究に取り組んでいる。
アンモニア分子(NH3)は水素3個と窒素1個からなるため可燃性であるが、着火は容易ではない。そのため、燃焼効率の向上が大きな課題となっている。
効率的な燃焼を実現する方法として、ガソリンとアンモニアを混ぜて使用することが一般的だったが、現在では脱炭素化のためアンモニア単体での使用を目指している。
上智大学理工学部の研究チームは3月、エンジン内の混合気の「旋回流」を促進することで燃焼効率を改善できる可能性があると発表した。旋回流とは、空気と燃料の混合気が形成する渦のことで、均一に混合されることで燃焼効率が改善されるという。
そして、効果的な旋回流を生むための条件を特定したというのだ。それが吸気ポートの設計だ。
この研究の主な目的は、エンジンの吸気システムとシリンダー内のエアフローの関係を調べることだった。
研究では、ガラス製シリンダーとガラス製ピストンを備えた可視化可能な単気筒エンジンを使用した。シリンダーに斜めに取り付けられたミラーにより、外側のカメラ(正確には粒子画像流速計、PIV)からピストンクラウンを通して燃焼室を見ることができる。カメラで吸気の様子をリアルタイムかつ非接触で撮影できるという、燃焼研究に最適なツールだ。
研究チームは空気と燃料の混合気をより見やすくするため、大きさわずか4.65ミクロン(100万分の1メートル)のシリカの微粒子を加えて実験を行い、2種類の一般的な吸気ポートで形成される旋回流を観測した。
その結果、ヘリカルポートと呼ばれる設計では良好な旋回流が見られたが、もう一方のタンジェンシャルポートという設計では、望ましい効果を得るためにはポート開口部の面積に工夫が必要であることがわかった。
研究チームは今後、この結果を応用して、アンモニアのみの燃焼やガソリンとアンモニアの燃焼を研究する予定だ。