「美貌とギャップ」で夢中にする! アストン マーティンDB12 ヴォランテへ試乗 調和しきれない怒涛の加速

公開 : 2024.05.02 19:05

魅力的な後ろ姿 インテリアもクラス最高

乗り心地は、ベントレー・コンチネンタルGTCほど上質ではない。それでも、ビルシュタイン社が開発した新しいダンパーは、DB11以上に優れた減衰特性と幅広い可変性を実現している。

スポーツ+モード時は、タイトに姿勢を制御。モードを緩めれば、一転して優しくなる。ポルシェ911 ターボ・カブリオレが、必要以上に硬く感じられるほど。

アストン マーティンDB12 ヴォランテ(英国仕様)
アストン マーティンDB12 ヴォランテ(英国仕様)

ロードノイズも、無視できるほど小さいとはいえないだろう。だが、その911ほど騒がしいわけでもない。

ルーフを開いた後ろ姿は、腰高感がなく魅力的。アストン マーティンによれば、折りたたんだ時のソフトトップ構造の厚みは260mmで、クラストップの薄さだという。49km/h以下なら、走行中でも14秒で開閉できるそうだ。

発表イベントで展示されていた車両は、タン・レザーのインテリアにシルバーの塗装というコーディネートだった。ガンメタリックのアルミホイールは、21インチ。来場者の足を都度止めるほど、美しい佇まいだった。

インテリアはクラス最高の仕上がり。DB11と比べて、インフォテインメント・システムは一気にモダンにもなった。ただし、最新水準といっていいが、アストン マーティンとして完璧というわけではない。

モニターへ描き出されるメーターのグラフィックはデジタル的で、奥深い印象が少し欠けている。ステアリングホイールのタッチセンサーは、しばしば反応が不正確でヤキモキさせられる。

不足ない魅力 夢中になるほどの美貌

純粋なドライビング体験でいえば、最大の宿敵、フェラーリ・ローマ・スパイダーの方が勝ることは否定できない。多少重いことは隠しきれていないし、ソフトトップを開くとシャシーは時々きしんでしまう。

また、5.2L V12エンジンの選択肢は用意されていない。折角のオープンボディなら、一層の美声を持つ多気筒ユニットが欲しいところかもしれない。

アストン マーティンDB12 ヴォランテ(英国仕様)
アストン マーティンDB12 ヴォランテ(英国仕様)

だとしても、DB12 ヴォランテは望み通りのオーバーステアで楽しませてくれる。カーブの頂点を過ぎ、僅かにアクセルペダルを戻せば、スーパーカーのようにワイドなフロントノーズは内側へ食らいついていく。筆者ならクーペを選ぶとしても。

息を呑むほどの速さは、F50並み。英国伝統のグランドツアラーらしい魅力に不足はなし。そして、夢中になるほど美しい。

◯:インテリアの素材や仕上げ品質 最新のデジタル技術 DB11よりパワフルでありつつ、アストン マーティンのグランドツアラーらしい乗り心地と操縦性
△:細かなバグが多いソフトウエア ライバルより大きく重いボディ

アストン マーティンDB12 ヴォランテ(英国仕様)のスペック

英国価格:19万9500ポンド(約3830万円)
全長:4725mm
全幅:1980mm
全高:1295mm
最高速度:325km/h
0-100km/h加速:3.7秒
燃費:8.2km/L
CO2排出量:276g/km
車両重量:1898kg
パワートレイン:V型8気筒3982ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:680ps/6000rpm
最大トルク:81.4kg-m/2750-6000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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