「しっとり」と「猛烈」の共存 BMW i5 M60 xドライブ 電動の旗艦が見せた幅広い守備範囲に脱帽
公開 : 2024.04.24 17:45
英国編集部が「電動のM5を期待するなら、少々肩透かし」と表現したBMW i5 M60 xドライブに日本で試乗します。ボディサイズも大きくなった5シリーズと2360kgという重量はどう影響するでしょうか?
8世代目の5、その旗艦はBEVに
昨年終盤にフルモデルチェンジを果たしたBMW5シリーズ。そのフラッグシップモデルであるi5 M60 xドライブに試乗できた。英国編集部が「電動のM5を期待するなら、少々肩透かし」と表現したモデルの、日本における印象はどうだろう?
今回の新型5シリーズの日本導入4モデルの顔ぶれは斬新だ。まずICEモデルは2L直4ガソリンMHEV、2駆の523iと、2L直4ディーゼルMHEV、4駆の523d xドライブの2台が用意される。
そう、5シリーズでありながら直列6気筒エンジン搭載モデルが導入されていないのだ。一方上位の2モデルはBEVとなっており、リア1モーターのi5 eドライブ40と今回試乗できた前後1モーターずつの4駆モデルとなるi5 M60 xドライブとなっている。
プラットフォームは現代BMWのM2から7シリーズまでを広くカバーするCLARの改良版であり、ICEとBEVの供用が可能になっている。その全長は5シリーズとして初めて5mを越えたが、見た目の印象は引き締まった感じがしてそこまで大きく見えない。
またフロア下にバッテリーを敷き詰めているにもかかわらず、ドアの下部やサイドシルに鋭いプレスラインが入っていることで厚みを意識させないことにも成功している。
BEVを匂わせるのはキドニーグリルの大半が艶っとした黒いパネルで覆われている部分、そして車格を考えれば“4本出し”でもおかしくない排気管がリアエンドに見られないことぐらいだろうか。
BEVらしさは希薄? でも加速は異次元
最初にバッテリー容量と走行可能距離をチェックするのは最近のお約束。すると97%、310kmと出ていた。
WLTCモードの一充電走行距離455kmと乖離があるのは珍しくないが、それでもヒーターの使用や、前に借りていた人が飛ばしていたからといった理由で2割減くらいに落ち着くことが多い。だとすると今回は短めかもしれない。
コクピットはフルデジタルだが、BEVらしさはそこまで強調されていない。先代から正常進化したスポーツセダンといった感じにまとめられているのである。
i5の特徴的な機能としてはステアリング裏のパドルが左側だけ付いていることで、それが10秒間のブーストスイッチになっている。一方回生を強めたければセンターコンソールのシフトレバーでDとB(バッテリー)モードを選ぶ必要がある。
走りはじめたとたんに上質さが伝わってきた。静かなのはもちろんだが、SUVでは到底まねのできない重心の低さ、そしてタイヤと足回りの一体感が感じられた。
街中をゆっくりと走らせたときの滑らかな動きはこれぞプレミアムサルーンといった感じ。それでいて、電脳リムジンのようなi7のゆったり感とは全く違い、ちゃんと4輪の存在を掌握できる精確でスポーティな感じが漲っている。
興味深いのは、i5の質感が少し前に試乗した523iと似ている点だった。プラットフォームを共有するだけあり、動力源が違っても全体的な味は共通なのである。それこそがICEのEクラスとBEVのEQEを各々専用プラットフォームで作ったメルセデスとは違う、BMWが表現したかった世界観なのだろう。