小さな「万能SUV」がマイチェン 熟成のフォルクスワーゲンTクロスへ試乗 95psでも魅力的

公開 : 2024.05.05 19:05

VWの小さなSUV、Tクロスが中期の小変更 スイートスポットは1.0L 3気筒ガソリンターボ 実用性に優れるインテリアが大きな強み 95psでも充分 英国編集部が評価

スイートスポットは1.0L 3気筒ガソリンターボ

量産車のフェイスリフトへ、社外のデザイン事務所が関わる事例は少なくないと、筆者は耳にしたことがある。オリジナルの長所を損なわず、魅力的にリフレッシュさせる技術をお持ちなのだろう。

ただし、2019年に発売されたTクロスのフェイスリフトは、社内で済まされたのかも。参加した可能性はあるが、見た目の変化は新しいバンパーとヘッドライトなど、非常に限定的。インテリアは、しっかり更新されたのだが。

フォルクスワーゲンTクロス 1.0TSI 95 ライフ(英国仕様)
フォルクスワーゲンTクロス 1.0TSI 95 ライフ(英国仕様)

Tクロスは丸みを帯びたスタイリングで、フォルクスワーゲンらしい落ち着いた雰囲気のクロスオーバーだ。しかし、日産ジュークフォード・プーマなどと異なり、目を引くような強い個性を備えるわけでもないだろう。

今回のフェイスリフトで最も大胆な要素といえば、鮮やかなイエローの塗装が追加されたこと。新しいヘッドライトと波打つフロントグリルが、イメージを大きく変えたようには感じられないと思う。

同社の中で最小のクロスオーバーとなるTクロスは、登場以来、ラインナップがシンプル化されてきた。英国仕様の場合、当初は5速MTか7速デュアルクラッチATを選べる95psの1.6Lディーゼルターボが存在したが、現在は販売されていない。

そのかわり、2020年に1.5 TSIエボ・エンジンを積んだ仕様が追加された。最高出力150psで、7速デュアルクラッチATが組まれ、秀でた動力性能を求める人へ応えている。だが、スイートスポットは1.0L 3気筒のガソリンターボだとAUTOCARは考える。

実用性に優れるインテリアが大きな強み

これには2つの最高出力が設定され、114psでは6速MTか7速デュアルクラッチATを選択可能。とても洗練されたユニットだ。今回試乗したのは、ベーシックな95ps仕様。英国では、5速MTのみの設定となる。

Tクロスは共通して前輪駆動。サスペンションはフロントがストラット式で、リアがトーションビーム式となる。

フォルクスワーゲンTクロス 1.0TSI 95 ライフ(英国仕様)
フォルクスワーゲンTクロス 1.0TSI 95 ライフ(英国仕様)

このクロスオーバーで強みとなるのが、インテリア。フェイスリフトを経て、ダッシュボードのデザインは大幅に改められ、高級さが増した。各部を引き締める装飾トリムも、雰囲気作りに貢献している。

もっとカラーバリエーションがあっても良さそうだが、支持率は高くないのかもしれない。2019年の発売時には、オプションで華やかなデザインパッケージが設定されていたが、現在はカタログから落ちたようだ。

前列側の空間は感心するほど広く、快適な運転姿勢を探しやすい。後列は前後にスライド可能で、乗員空間を優先するか荷室空間を優先するか、調整できる。荷室のフロアは高さを変えられ、ホームセンターでの買い物などで便利。実用性は高い。

ドライバーの正面には、メーター用モニターが据えられる。ただしサイズは小さめで、アナログ・デザインのメーターは、速度計と回転計を同時に表示できない。燃料計や水温計などのグラフィックは、もう少しモダンでも良いだろう。

内装の質感は、このブランドらしく好印象。ゴルフより上質ということはないが、不快なチープさがあるわけでもない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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