アウディの美点を「ギュッと凝縮」 更新版S3へ試乗 333馬力にトルクスプリッター 少し真面目すぎ?

公開 : 2024.05.06 19:05

大幅なアップデートを受けた4代目アウディS3 ブランドの良いところをギュッと凝縮 EA888型4気筒ターボは継投 最大の進化はトルクスプリッター 英国編集部が評価

アウディの美点をギュッと凝縮

コンセプトは、1999年に発表された初代アウディS3と変わりない。スポーツ・プレミアム・コンパクトのままだ。

パワフルで四輪駆動のパワートレインに、高級感のあるインテリア。小さなファミリーカーという、パッケージングも望ましい。現代のアウディの美点を、ギュッと凝縮したモデルと呼んでイイ。

アウディS3 サルーン(欧州仕様)
アウディS3 サルーン(欧州仕様)

ただし、ドライバーズカーとして、クルマ好きから多大な注目を集めてきたわけでもない。初代S3が正当なトルセンではなく、ハルデックス四輪駆動システムを採用しつつ、クワトロと名付けたことへ批判があがったことも、影響しているかもしれない。

技術的に近いフォルクスワーゲン・ゴルフ Rも、歴代のイメージの足を引っ張ってきた。比較して車重は軽くなく、ステアリングは淡白で、価格価値に優れるとはいえなかった。

だが、アップデートを受けたS3は違う。リアアクスルには、知的なトルクスプリッター・システムを採用。最高出力は333psもある。バッテリーEV版が登場すると噂される2027年まで、不足なくホットハッチの役目を果たせるだろう。

他方、現在は少し中途半端なポジションにもある。メルセデスAMG A 45が格上のライバルとして存在し、アウディ自らもRS3を擁する。初代のように、スポーツ・プレミアム・コンパクトの頂点に位置するわけではない。

2024年のS3は、天候不問のホットハッチの中でも丸みを帯びた個性で、普段使いしやすい洗練性を備えることが強みになる。最新版の仕上がりを、確かめていこう。

EA888型4気筒ターボは継投 刺激は薄め

4代目S3の容姿は、4本出しのマフラーが凄みを効かせ、鮮やかな塗装色も選べたが、通常のA3との違いは大きくなかった。しかし、フェイスリフトで明確に差別化されたように見える。

フロントグリルや、バンパーのエアインテークはワイドになり、4リングスは高い位置へ移動。ヘッドライトの点灯パターンは、4種類から選べる。リアディフューザーの形状も新しくなった。凛々しさを強めたと思う。

アウディS3 サルーン(欧州仕様)
アウディS3 サルーン(欧州仕様)

ハッチバックのスポーツバックと、サルーンから選べるボディの内側、パワートレインに大きな変更はない。フォルクスワーゲン・グループのEA888型2.0L 4気筒ターボガソリンは、小さな改良を受けつつ継投されている。

最高出力は、310psから23ps増強。最大トルクも、2.0kg-m増しの42.7kg-mへ引き上げられた。0-100km/h加速は4.7秒。一般道では不足ないほど速い。

トランスミッションは、7速デュアルクラッチ・オートマティック。アクセルペダルから力を抜くとニュートラル状態になり、滑走して燃費を伸ばせる。マニュアルはない。

EA888型ユニットの特徴は、既に10年以上確かめてきたものへ通じる。トルクは太くフラットで、回転の上昇とともにピークへ登り詰めていく感じは薄い。

それでも、アイドリングの回転数は200rpm上昇。ブースト圧が早期に高まり、全力を発揮させた時の勢いは従来以上だ。

7速ATは非常に滑らかだが、こちらも淡白。シフトパドルには、ギアを選んだという感触が欲しい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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