スーパーチャージャーが「別物」に変える モーリス・マイナー(2) 驚くほどのチューニング効果

公開 : 2024.05.11 17:46

チューニングでフィーリングは完全に変わる

坂道へ差し掛かっても、シフトダウンの必要はなし。むしろ、加速していく余裕すらある。後期のAシリーズ・エンジンを搭載したマイナー 1000と同様に、洗練性を保ったまま、流れの速い郊外の道を運転できる。

プッシュロッドの金属的なノイズが、キャビンへ伝わる。サイドバルブとは異なる響きで、耳に心地良い。アルミ製のアルタ・ヘッドを積んだマイナーは、約20台が現存すると考えられている。

モーリス・マイナー(アルタ・ヘッド+スーパーチャージャー仕様/1949年式/英国仕様)
モーリス・マイナー(アルタ・ヘッド+スーパーチャージャー仕様/1949年式/英国仕様)

「このチューニングで、クルマのフィーリングは完全に変わりました。とても扱いやすくなりますよね」。とニューウェルは説明する。

「以前に乗っていたマイナーには、デリントンのシルバートップ・キットが組まれていましたが、比較にならないほど違います。アルタ・ヘッドの装備は、918ccのマイナーから本来のパフォーマンスを引き出す、最も簡単な方法といえるでしょう」

「最高速度以上に、中間加速の向上が大きいです。3速でのたくましさは、とても印象的なものですよ」

このヘッドの登場により、一層の動力性能を追求することも可能になった。キース・ラック氏が所有する、プラチナ・グレーの1949年式マイナーには、スーパーチャージャーが載っている。

エンジンはバランス取りされ、軽量化。4分岐の排気マニフォールドが組まれ、SUキャブレターの隣にショロック社製のスーパーチャージャーが追加されている。ブースト圧が4psiの時の最高出力は、66psに達するそうだ。

本調子でなくても簡単に100km/hへ到達

あいにく、ラックのクルマは不調だった。混合気の調整が悪く、プラグも汚れていた。それでも、勇ましいサウンドを放ちながら、ストレートでは簡単に100km/h超え。自然吸気より、たくましいことを簡単に体感できる。

「スーパーチャージャーは、まったく別物に変えます」。ラックが微笑む。

モーリス・マイナー(1949〜1950年式/英国仕様)
モーリス・マイナー(1949〜1950年式/英国仕様)

「アルタ・ヘッドのメリットとして、運転のしやすさが得られたうえに、ブロワーがトップエンドの力強さを加えます。この組み合わせで、一層豊かなトルクを引き出せ、現代の交通環境にも対応できます。坂道でも、問題なく速度を維持できますよ」

本調子ではなかったとしても、アルタ・ヘッド+スーパーチャージャーというタッグの魅力は大きい。雨天で浮かない気分を吹き飛ばすほど。

同時に、自然吸気版の優秀ぶりにも感心させられる。適度に活発で、ドライバーに優しい。70年以上前に、高く支持されたチューニング・メニューだったという事実を、理解できる。

一方で筆者は、オーバーヘッドバルブのシリンダーヘッドを載せた、ウーズレー・エンジンの活発さも知っている。得られる動力性能や全体的な特徴は、アルタ・ヘッドを積んだマイナーのエンジンと、非常に良く似ている。

1948年に、モーリス・モーターズが望ましいエンジンを準備できていたら。理想的なマイナーを、当初から量産できていた可能性は高い。優れたアルタ・ヘッドは、そんなことを想像させるスグレモノだった。

協力:モーリス・マイナー・オーナーズクラブ、グラハム・ホルト氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・プレスネル

    Jon Pressnell

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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