新しくもどこか懐かしい? 「愉しむためのBEV、時代が変わる予感」 ヒョンデ・アイオニック5N
公開 : 2024.04.25 12:05
ヒョンデに新しく設定されたNグレード。今回は袖ケ浦フォレストレースウェイにてアイオニック5Nに試乗します。このクルマ、誤解を恐れずに言えばアナログ車好きのツボを押さえた新しい時代のスポーツEVかもしれません。
ドリフト上等、仕上がりに自信あり
今回日本デビューを果たすアイオニック5Nは、その名の通りアイオニック5をベースとしたNブランドのモデルということになる。
AUTOCARではすでに英国編集部によるレポートをアップ済。今回は袖ケ浦フォレストレースウェイ(FRW)において行われた試乗会における印象を報告する。
ベースとなったAWDのアイオニック5の最高出力は305ps。これでも十分にパワフルな感じがするが、対する5Nは倍以上の650ps! しかもその高出力を徹底的に遊ぶために利用しようという試みが興味深い。
袖ケ浦FRWに到着すると珍しい光景が目に飛び込んできた。パドックに散水されたエリアがあり、そこでドリフト試乗が行われていたのである。クローズドコースで結果的に滑ってしまうことはあるが、積極的に滑らせてちょうだいという試乗会は初めてかも。ヒョンデのN、いきなり熱量が凄いのである。
アイオニック5Nは650psに対応するための専用装備で固められている。タイヤもベースモデルの255から275幅に拡幅。専用の電制サスや電子LSDも装備しているし、ボディシェル自体もスポット溶接と接着剤で強化されている。攻撃的な前後バンパーや赤いラインによる見た目の差別化も効いている。
室内もツボを抑えたブラッシュアップが施されている。ステアリングはエアバッグ部が小さくボタンが増設されたスポーツタイプだし、センターコンソールも専用品に換装されている。フロントのセミバケットシートも運動性能を考えればマストアイテムだ。
サーキット連続周回宣言に驚く
試乗前の説明で特に感心させられたのは「レーストラックケイパビリティ=本気でサーキットを走れる性能」を強調していた点だった。
市販車を全開で走らせたとき最初に問題となるのはブレーキだ。ほとんどの市販車はサーキットで連続周回できるようには作られていない。だがアイオニック5Nの場合フロントの大径ブレーキに加え強力な回生を併用することでフェードに対処しているという。
一方過酷な走行に対応するためのバッテリーの温度管理も徹底しており、それによってローンチコントロールやオーバーブーストの性能を担保しているという。ハイパワーEVであればこの手の対策は施しているはずだが、その仕上がりをことさら強調しているあたりが、繰り返しっぽくはなるが今回のヒョンデNの斬新な部分なのである。
標準で609ps、ステアリング上の赤いオーバーブーストボタンを押すと10秒間だけ650psが供給される。だが実際にサーキットを走ってみると、パワーよりもボディの剛性感の方が印象に残った。ベースモデルではその強固な感じが上質さに直結していたが、アイオニック5Nでは600psオーバーのパワーを余裕で使いこなすための起点になっていた。
低速コーナーから立ち上がる瞬間は4駆のスタビリティを実感するが、それ以外のシーンではリアモーター主導によるFR的なすっきりとした走行フィールに終始。
気持ちいい走りをよく理解しているエンジニアによって作り込まれた感のある、いかにもメーカーチューニングらしい隙のなさである。