クルマ好きにとって「大きな瞬間」 ジャガーFタイプ クーペボディとのお別れ 長期テスト(最終)

公開 : 2024.05.04 09:45

クルマ好きにとっても大きな瞬間

まあ、Fタイプは完璧な内燃エンジンモデルというわけではなかった。筆者好みのシートポジションへ設定すると、フロントガラス両脇の太いピラーが視界を遮った。交差点では、身を乗り出さないわけにはいかなかった。

パッケージングも理想的ではなく、2シーターのクーペとしては、車重が1780kgと重かった。とはいえ、同等のバッテリーEVなら、500kg前後は更に重くなるはずだが。

ジャガーFタイプ R75 クーペと、担当者のスティーブ・クロプリー
ジャガーFタイプ R75 クーペと、担当者のスティーブ・クロプリー

2025年以降に向けて、ジャガーは展開を明らかにしている。広告などには、期待をもたせるような表現も見られるが、ほぼ確実にスポーツカーはラインナップへ加わらないだろう。短期的に、ではなく。

ジャガーにとって、大きな瞬間が来ようとしている。クルマ好きにとっても。

それでも、別れを嘆いているだけではAUTOCARらしくない。英国の中古車市場を検索すれば、V8エンジンを載せた走行距離の浅いFタイプが、40台前後売られている。価格は、安いものなら8万ポンド(約1536万円)から。今なら値引きも効くようだ。

Fタイプのようなクルマは、頻繁に乗られる種類ではない。まだ数年間は、良好な状態の例を探せるはず。象徴的なモデルが再び登場することを期待しつつ、大切に乗りながら、その日を待つしかないだろう。

セカンドオピニオ

こんなクルマが、ショールームから消えてしまうことが信じがたい。動的特性へ細心の注意が払われ開発された、Fタイプ Rは素晴らしかった。道や速度を問わず、楽しむことができた。

時代を代表する1台といっていい。中古車の人気も、これから上昇していくに違いない。 マーク・ティショー(Mark Tisshaw)

ジャガーFタイプ R75 クーペ(英国仕様)
ジャガーFタイプ R75 クーペ(英国仕様)

テストデータ

気に入っているトコロ

刺激的なレイアウト:ロングノーズの2シータークーペこそ、スポーツ・グランドツアラーを体現したもの。将来のジャガーには、存在しないであろう種類だ。
目の覚めるパワートレイン:大排気量で滑らかなV8エンジンが、圧巻の速さと一体感を提供する。8速ATも素晴らしい。
類まれなスタイリング:ロングノーズ・ショートデッキのプロポーションを持ち、非常に美しい。
長距離での快適性:ロードノイズを除いて、欧州横断に求められるすべてを備えている。

気に入らないトコロ

ロードノイズ:大径のタイヤとボックスセクション・ボディの影響で、走行音はうるさかった。他メーカーの設計なら、こうはならないだろう。

走行距離

ジャガーFタイプ R75 クーペ(英国仕様)
ジャガーFタイプ R75 クーペ(英国仕様)

テスト開始時積算距離:704km
テスト終了時積算距離:1万1168km

価格

モデル名:ジャガーFタイプ R75 クーペ(英国仕様)
開始時の価格:10万3075ポンド(約1979万円)
現行の価格:10万7155ポンド(約2057万円/(R75 プラス)
テスト車の価格:11万1000ポンド(約2131万円)

オプション装備

20インチ 5スプリットスポーク・アルミホイール :2000ポンド(約38万4000円)
カルパチアン・グレー塗装:1335ポンド(約25万6000円)
パノラミック・ガラスルーフ:1335ポンド(約25万6000円)
エクステンデッド・レザーシート:1055ポンド(約20万3000円)
クライメート・パッケージ:685ポンド(約13万2000円)
盗難防止トラッカー:545ポンド(約10万5000円)
ブラインドスポット:アシスト:500ポンド(約9万6000円)
ドライバーアシスト・パッケージ:470ポンド(約9万円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:9.6km/L
タンク容量:70.0L
平均燃費:9.4km/L
最高燃費:11.4km/L
最低燃費:5.8km/L
航続可能距離:659km

主要諸元

全長:4470mm
全幅:1923mm
全高:1311mm
最高速度:299km/h
0-100km/h加速:3.5秒
乾燥重量:1743kg
パワートレイン:V型8気筒5000cc スーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:575ps/6500rpm
最大トルク:71.2kg-m/3500-5000rpm
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
トランク容量:509L
ホイールサイズ:20インチ
タイヤ:255/35 ZR20(フロント)/295/30 ZR20(リア)
車両重量:1780kg

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:1390ポンド(約26万9000円/月)
CO2 排出量:239g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:1673ポンド(約32万1000円/ガソリン)
燃料含めたランニングコスト:1673ポンド(約32万1000円/ガソリン)
1マイル当りコスト:0.26ポンド(約50円)
不具合:なし

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

長期テスト ジャガーFタイプの前後関係

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